けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【紹介】次世代の激アツ王道少年漫画【怪獣8号】

Hatena

 ども、けろです。

 前回は推しの子の紹介記事を書いたので、今回は同じジャンプ+作品の中でも僕がこのブログで感想記事を書いている漫画、『怪獣8号』についての紹介記事を書こうと思います。

 

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shonenjumpplus.com

 

1.あらすじ

 

 世界観としては現代の日本、地震や台風のような自然災害と同様に「怪獣」が災害として頻出する世界。現代でいう自衛隊に位置する「防衛隊」と呼ばれる組織がこの討伐にあたり、人々の平和を守っている。

 

 主人公日比野カフカ(32歳♂)は、防衛隊……ではなく討伐された怪獣の解体・処理作業を担当する清掃業者の職員として、日夜怪獣の骨やら血やら内臓やらを処理する業務にあたっていた。

 

 彼の幼馴染である亜白ミナは、人々から羨望の眼差しを浴びる防衛隊最強と名高い第3部隊の隊長。片やカフカはパッとしない生活……

 

「なんでこっち側にいるんだろ俺……」とビールを飲みながら独りごちる彼の目はどこか虚。かつては防衛隊を志していたものの、試験で何度も落ちるという苦い過去があったのでした。

 そんなある日、防衛隊志望の市川レノ(18歳♂)が新人バイトとして加わり、彼の口から防衛隊の募集基準年齢が33歳未満に引き上げられることを知るカフカ。

 

「諦めた話してる時すげーさみしそうな顔してたから」とレノの優しさに感謝し、カフカは防衛隊を志すーーー

 

 という完全王道なストーリーで進むのかと思いきや、なんと1話でこの2人が怪獣に襲われ、命からがら助かったかと思ったのも束の間、突如現れた小型の怪獣がカフカの口から体内に入り、気づいたら人型の怪獣になってました。防衛隊入隊を果たしたい彼はこれからどうなる?というところで第1話が終わります。

 

2.王道と非王道の絶妙なバランス

 

 「自分より遥か先をいく幼馴染を追いかけて、一度は夢を諦めた主人公がもがきながら挑む」と書くといかにもベタベタな王道漫画かと思いきや、主人公は30過ぎたおっさん(と書くと全国の30代前半の人、及び未来の自分が窒息死しますが)だったり身体に怪獣の力を宿したり、元の職業がパッとしない清掃業者という凡人設定だったりと、良い意味で王道から「ハズして」いるんです。

 

 この絶妙な「ハズし感」が物語のスパイスとして丁度良いんですよ。おっさんだから周りの若者と同じようには動けないけど、元清掃業者というキャリアを活かして頭脳プレイをするところとか、怪獣化すれば大概の敵は簡単に沈められるけど、そこを自分の力で乗り越えようとしたり(でもどうしても勝てない敵がいたらリスク覚悟で怪獣化したり)。

 ベタな王道漫画って、確かにテンプレ化されているので良い意味では読みやすいんですが、悪く言えば展開が読めてしまうのが難点だと思うんですね。この作品はそれがない。

 

 ないというか、勿論王道展開は随所にあって少年漫画特有の「アツさ」はバッチバチにあるんだけど、それだけじゃない「読者を飽きさせない・掴みにくる独自性」が散りばめられている。

 

 他にはエピソード全体のテンポの良さが挙げられます。

 よくある少年漫画って、1話の最後の方で見開きページ使って敵をドーンって倒して終わるじゃないですか。でもこの作品は1話の最後の方で出てくる怪獣を倒すのはカフカじゃなくて第3部隊だし、ほのぼのするのかと思いきや最後のページで怪獣になるしで、展開が「型」にハマってないんですよ。

 

 2話冒頭では主人公が病院から慌てて脱出するシーンから始まって、街中を怪獣姿のカフカと、一緒に脱出してきたレノが走るシーンに繋がるんですが、ここでの掛け合いのテンポが読んでて心地いい。クスリとできる台詞があったり、普通に笑ってしまうギャグ要素があったり。

 

 でも2話の最後では贅沢に見開きカラーを使ってカフカの格好いいシーンを描いていて、1話の中で綺麗に起承転結がまとまっている。その上全面シリアスというわけじゃないのでテンポよく読める。

 

 主人公が敵を倒しながら仲間を集めて……といった王道の少年漫画的展開とは少し違った展開と描き方が読者心をくすぐる出来になっていて、とにかくずっと楽しくページを捲れる。すごい。

 

3.キャラクターの魅力・描写の熱さ

 

 本作を語る上で欠かすことができないのが、各キャラクターの魅力、信念等が熱い描写で描かれるところです。

 

 例えば第1話でピンチになったカフカを助けに入ったレノの「ここで先輩置いて逃げ出すようじゃ、きっと俺は隊員になんてなれない!!」には彼なりの信念を感じるし、2話最終ページでの主人公の「アイツ(亜白ミナ)の隣に行かなきゃなんねぇ」には彼の夢への思いを感じる。

 

 第9話でカフカが零した「夢を追うってのは、一番譲れない大事な物で毎分毎秒誰かに負け続けることなんだ」という台詞がグッときました。今まで夢を追いかけてきて、それを一度は挫折した彼だからこそ言える言葉だな、と。

 

 カフカが憧れる第3部隊の保科副隊長の「斬って斬って斬り開け。それだけが僕の存在証明や」も、その前後での彼のエピソードが相まって最高に震えるセリフになっていました。

 

 このように、各キャラに骨太なバックボーンや魅力ある設定がてんこ盛りで、だからこそそこから出てくるセリフに重さや熱さ、説得力が滲み出ているのだなと。

 

 

 現在(2021/04/04時点)単行本は2巻まで出ており、既に発行部数は100万部を超えています。

 ジャンプ+史上最速と言われており、今後もどんどん伸びていくだろうなと思っています。

 

 例の如くジャンプ+で初回無料で読めるという破格の対応ですので、ぜひ一気読みして最新話に追いついてください。まだ30話前後なのですぐに読めると思います。

 

 

 ジャンプ+は面白い漫画が多いのに、アプリ媒体という関係上なかなか知名度が伸びなかったりするので、こういう漫画が牽引してくれると嬉しいなと思います。

 

 

 それではまた別の紹介記事で。

 

 

 よしなに。

*1:引用:松本直也『怪獣8号』第1巻、集英社