けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【考察】「青山優雅=無個性」の伏線を洗い出す【僕のヒーローアカデミア】

Hatena

 ども、けろです。

 今週のヒロアカNo.336で明らかになった「青山優雅=内通者」の衝撃、ちょっと凄まじすぎましたね。

 それと同時に先週までの「葉隠透=内通者」の可能性がグッと低くなってしまったんですが、それはまた別記事で取り上げることにしますが、今回は「青山優雅」というキャラクターについて登場した設定の一つ「無個性」について、過去の描写を振り返ることでその伏線の巧妙さを明らかにしていきます。

 

 というわけでやっていきましょう、ヒロアカ考察回です。

 

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1.仮免試験中の発言

1-1.「皆と違う」ことが明かされた独白

 

 単行本12巻で描かれた仮免試験。

 その第一次選考で行われた全参加者合同のバトルロイヤル。

 その只中で窮地に立たされた青山は、クラスメイトの飯田の合格を優先し空目掛けて自身の「個性」であるレーザーを放ちました。

 

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 その直前、飯田の「俺の行動は俺の夢の形でもある」という発言を受けた青山は、上記のような独白をし、脳裏に(いつのものかは分からないが)過去に家族に対して向けたと思われる台詞が浮かんでいます。

 

「パパンママン…どうして僕は皆と違うの?」

 

 この言葉、当時読んでいた際はあくまで「青山優雅というキャラクターの特異性」を指しているものだと思っていましたし、仮に「個性」に関する言及であったとしても「レーザーを放つことで腹痛を引き起こすデメリットを持ったこと」に対する負の感情の発露・両親へのやり場のない怒り程度だと捉えていました。

 事実ヒロアカ世界における「個性」は身体能力の延長であり、使うことに対するデメリットが存在しています。「無重力」のお茶子であれば「吐き気」「爆破」の爆豪は「身体ダメージ」「炎熱」のエンデヴァーは「体温上昇による身体機能の低下」など、万能に見える「個性」には必ず使用に際して「制約」のようなものがあります。ほぼ全ての「個性」にあるといっていいでしょう。

 

 そうした情報が「設定」として事前に刷り込まれていたからこそ我々読者はこの台詞にも特段違和感を感じることはありませんでした。

 ただ、「青山優雅はかつて無個性であった」という事実が明らかになった今振り返ると、その意味が変わってきます。

 

 最新336話で描かれた幼少期の回想シーンでは、幼稚園生達がそれぞれ「個性」を発現させている場面が描かれました。

 つまり青山は「幼少期に周囲の人間と自分は決定的に違うのだ」ということに直面しており、その中で両親に「皆は「個性」を持っているのにどうして僕だけ「個性」がないの?」という疑問を呈していたことになります。それを受けての「どうして僕は皆と違うの?」という発言があったと考えられます。

 

1-2.「対等になりたい」と願っていた青山

 

 加えてその仮免試験で飯田を助ける行動に出た青山は、その行動の真意を飯田に尋ねられ、意味深な表情で「僕はずっと対等になりたかったのさ」と述べています。

 

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 この言葉も、当初は「土壇場で立ち向かうことができない己の弱さを克服したいと思っている」程度の解釈でした。事実青山は林間合宿で敵連合が現れた際も縮こまって震えており(今にして思えばあれは「自分が流した情報でクラスメイトが傷ついていることに対する恐怖」だったのだと考えられますが)、我々読者は無意識の刷り込みで「青山優雅という人物は言動と行動の派手さに対してヒーローとしての覚悟が足りていないキャラクターだ」という認識を抱いていたことになります。

 

 これもまた、最新336話で描かれた過去の回想での青山と両親の会話を踏まえると、違った意味になります。

 

「優雅は皆と一緒がいい…?」

「うん…だって、違うのはとても怖いから」

 

 そして現場に現れたデクに対する、(そう、僕だけが)という独白。

 これらを踏まえると、上記の発言は単に自分自身のヒーローとしての素養の話だけではなく、「「無個性」に生まれた僕も、「個性」を持って生まれた皆と同じように対等にヒーローを目指したい」という彼の思いが込められていたことになります。

 

 もちろんこれは「青山=内通者」という情報を踏まえると「敵連合に情報を流していた僕でも、皆の役に立てることをしたい」と思っていたとも解釈できます。彼なりの贖罪だったのかもしれませんね。

 

2.個性圧縮訓練でのデクとの会話

 

 続いて単行本19巻。個性圧縮訓練中に体調を崩してしまった青山にデクが寄り添うシーンでのこと。

 

 ここで青山はデクの「個性」について妙に踏み込んだ発言をします。

 

「君の"個性"、体と合ってない。君は僕に似ているんだ」

「似てるって…!?何がー」

 

 自分自身とデクが「似ている」と評した青山は、続けて下記のように言及し、「お医者様にそう言われた」と結びます。

 

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 今にして思えばこの「お医者様」というのは単なる町医者のことではなく「オール・フォー・ワンの側近であるドクター・殻木」だったと考えられますが、それは少し置いておきます。

 重要なのは「「無個性」の状態から他人に個性を譲渡された緑谷」という特殊な環境にいるデクを「似ている」とした点であり、それを指して「僕も身体と"個性"が合ってないんだ☆」と言及した点です。

 

 読んでいた当初は「青山の「個性」もデク同様にデメリットが大きいのだな」と考えていた程度でしたが、やはり最新話の情報を踏まえると意味が180度変わります。

 つまり「青山の個性はデクと同様に他人から譲渡されたものであり」、その上で「他人から「個性」を譲渡されるという似通った境遇のデクに対し親近感を抱いていた」というのがこの時点で仄めかされていたということです。この時点での青山はデクが元無個性であることを知らないわけなのであくまでただの暗示でしかありませんが、それにしてもエグすぎ。

 

3.「個性」に関する語句が含まれない名前

3-1.名が体を表すヒロアカ世界の法則

 最後はおまけ程度になりますが、ヒロアカ世界に登場するキャラクターというのはその多くが「名前」に自身の「個性」に関する単語が含まれています。もちろん全員ではありませんが、かなり多いです。

 

 例えば「耳郎響香」には彼女の個性「イヤホンジャック」を連想させる「耳」「響」が、「上鳴電気」は個性「帯電」を表す「かみなり」「電気」「半冷半燃」「轟焦凍」には「焦」「凍」が含まれています。

 他には「芦戸三奈」には「酸」を意味する「アシッド」が、「蛙吹梅雨」には「蛙」とそこから連想される「梅雨」の文字が含まれていたりと、文字通り「名は体を表す」というのがヒロアカ世界におけるキャラクターのネーミングです。

 

 一見すると「個性」と繋がりがなさそうに見える「飯田天哉」も、苗字(いい-だ)と名前(てん-や)を分解すると俊足の例えとして用いられる「韋駄天」が浮かび上がってきますし、「麗日お茶子」「(麗)ウラ、日(ビ)、茶(ティ)」という言葉遊びが含まれています(加えて彼女の個性「ゼロ・グラビティ」は『G(=重力)を無くす』という意味があり、『グラビティ』をローマ字変換して"G"を消すと"(G)U-ra-bi-thi"となり彼女のヒーロー名「ウラビティ」になるというギミックがあります)。

 

 

 つまりヒロアカのキャラクターには、「それぞれが身体に宿す個性を連想させる言葉が名前に含まれている」という暗黙のルールが存在しており、それはほとんどすべてのキャラクターに適用されます(プレゼントマイクの本名「山田ひざし」は例外的ですが、現実世界に同名のラジオDJがいるのでギリギリルールが適用されていると言っていいでしょう)。

 

3-3.「無個性」を象徴する「青山」と「緑谷」

 

 ではそんな中で「無個性」であることが明らかになっているキャラクターはどうでしょうか。

 作中で登場したメインキャラクターで「無個性」であることが明らかになっているのは主に「緑谷出久」「オールマイト(八木俊典)」「青山優雅」の三名です。

 彼らはいずれも先天的に「無個性」であり、他者から後天的に譲渡される形で「個性」を発現させています。そして彼らの名前に着目すると、その文字列のどこにも「個性」が連想される語句が含まれていないことが分かります。

 

 青山は確かに煌びやかな見た目をしており、言動や行動から「優雅」という言葉を思い浮かべることは可能ですが、そこから彼の「個性」である「ネビルレーザー」は導き出されません。

 

 つまりこれらの法則・描写から、「青山優雅というキャラクターはその名前の時点で既に「無個性」であることが仄めかされていた」ということが浮かび上がってきます。怖すぎ。

 

 (これを書いていてオールマイトの先代継承者「志村菜奈」にもルールが適用されないことに気づきました。ただ、彼女の存在は「「浮遊」という個性使い」としてではなく「OFAの歴代継承者」としての側面が強いので、継承順である「数字」を名前に含ませるに留まったのではないか、と考察します)

 

 

 さて、ざっくりではありますが過去のエピソードや描写を振り返ってみました。

 読んでいた当初と、伏線が明らかになった今とで抱く印象が180度変わるというのは、作者の叙述があまりに巧みであり、読者に気取らせない技巧の上手さというのを感じます。

 

 恐らくここ以外にも「青山=無個性」を仄めかす描写というのはあるのかもしれませんが、今回はこの辺で。

 

 

 

 それではまた。

 

 

 よしなに。

 

*1:引用:堀越耕平『僕のヒーローアカデミア』集英社、第12巻、p177

*2:引用:堀越耕平『僕のヒーローアカデミア』集英社、第12巻、p179

*3:引用:堀越耕平『僕のヒーローアカデミア』集英社、第19巻、p20