けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【紹介】現実と非現実の融合、異色の芸能漫画【推しの子】

Hatena

 ども、けろです。

 

 こうして漫画に関する考察・感想ブログを書いていると、普段記事で取り上げている漫画以外も紹介したい衝動に駆られてきます。

 

 普段は呪術廻戦を中心にした記事を書いているので、今回は雰囲気を変えて漫画紹介記事を書いていこうと思います。これから不定期でやっていくと思いますので、何卒よろしくお願いします。

 

 初回はヤングジャンプ、ジャンプ+で現在連載中の大人気作品、『推しの子』を取り上げてやっていこうと思います。ええそうです、ミーハーです。

 

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shonenjumpplus.com

 

 

1.あらすじ

 

 田舎で産婦人科医として働く厄介……もとい熱心なドルヲタ・ゴロー。ある日彼の元に、体調不良により活動休止中のアイドルグループ『B小町』のエース、星野アイ(16歳♀)が現れる。

 最推しのアイドルが自分の前に、しかも父親不明の双子の妊婦として診察を受けていることにゲボを吐きそうになるゴロー。

 

 アイの「子供は産む、アイドルも続ける(要は子供の存在は公表しない)」という意志の強い決断に、ゴローは「安全に元気な子を産ませる」と決意する。

 

 予定日当日の夜、夜道を歩いていたゴローは不審者に襲われ、命を落としてしまう。再び目が覚めると、彼は星野アイの子供に転生していた。

 推しの子として生まれ変わったゴローの人生はどうなるのか……?

 

 

 あらすじだけ聞くとよくある転生モノの現代版かと思いますが、それはほんの序章、作品を盛り上げるエッセンスでしかないので、騙されたと思って冒頭だけでも読んでみてください。

 

 知っている人は知っていることですが原作が『かぐや様は告らせたい』の赤坂アカ先生作画が『クズの本懐』『君は淫らな僕の女王』の横槍メンゴ先生という鬼才タッグです。

 

2.非現実が齎すエッセンス

 

 よく芸能人の結婚報道が流れる度、「今死ねば○○の子供に生まれ変われる」という激ヤバな声を耳にします。

 私の友人でも3〜4人ほど「堀北真希の子供になる」「パパは菅田将暉、ママは小松菜奈」と妄g……想像力豊かな未来図を描いていた人がいましたが、全国規模で考えると堀北真希さんは一体何人の子供を産むことになるんでしょうか。

 

 とまぁ、アイドルや芸能人、タレントのファンをやっていれば誰でも一度は思う「推しの子供に転生」という酒の肴として最高に盛り上がれる題材を大真面目にエンタメ作品に落とし込んだのがこの作品。

 

 前述のようにアイは双子を妊娠していて、主人公ゴローは転生後に星野愛久愛海(あくあまりん、以下アクア)というぶっ飛んだキラキラネームを授かるんですが、双子の妹の瑠美衣(るびい)もまた誰かの転生者です。ちなみに生前の彼女もアイの狂信的なオタクでした。

 

 異世界転生やら強くてニューゲームやら、フィクションの世界では手垢がつきすぎて元の姿形が判別できなくなっているジャンルですが、この作品は「主人公達が転生者という点以外はほぼ全てが現実的」です。

 確かにアクアは生前医者だったということもあり類まれな知識と偏差値を誇りますが、それ以外特に目立った能力はありません(あくまで先天的、という話です)。

 

 だからこそ物語序盤では「大人並みの知識を持っている早熟な幼児」というギャップが良いスパイスとして機能しているし、その要素がギャグパートもシリアスパートにも活きている。転生モノによくある主人公無双とかそういうわけではないから、読んでいて飽きがないしテンポが良い。

 

 この、「転生という非現実」と「至極現実的な芸能界」との絶妙なバランスが、ページをめくる手を止めてくれない。まじですごい。加えてギャグパートのテンポの良さ、掛け合いの巧みさがまさに『かぐや様』を彷彿とさせる面白さで、常にクスリとできるので最高です。

 

3.急展開による物語の加速 

 

 ネタバレにならない範囲で書きますが、1巻では乳児期・幼少期のアクアとルビー、母アイが中心となって描かれます。

 

 読んでいた感想としては「ああなるほど、『かぐや様』と同じ感じで、転生者の二人を中心としたギャグテイストな日常モノなのか」と軽く考えていたんですが、1巻の最後の展開で度肝を抜かれました。読んでいて「えっえっ嘘でしょ」とリアルに一人で呟くくらいにはびっくりしました。

 

 いやほんとに、ネタバレ覚悟で洗いざらい全部書き出したいんですが、それをすると初見で読んだ時の衝撃が減ってしまって申し訳がないので……

 

 まぁ1巻に収録されている各話最初の1ページ目がそれぞれちゃんとした伏線だったんですよ……私に言えるのはそれだけです。

 

 今まで軽く踏んでいる程度だったらアクセルを、急にベタ踏みにしたくらいの加速感があります。アクセル感タマンねぇ。

 

 ですので、初見の方は是非単行本1巻分はイッキ読みしていただきたいです。

 1巻全部が壮大なプロローグとしての位置付けになっているので、そこまで読んでいただいてから読み続けるか判断するのがいいと思います。

 

4.現実描写の解像度の高さ

 

 これがこの作品の魅力をもう一段階引き上げてると思っている思っているんですが、現実世界を描く解像度がまじで高いです。

 

 どういうことかというと、作中で登場する様々な「人の声」が本当にリアルで、「あぁ確かにこういう人いるよな」と腑に落ちるんです。

 例えば特定のニュースに対する(Twitter、ニュースサイト、掲示板での)世間の反応の違いや書き込みの差異なんかは本当に見事に現実をそのまま映し出していて、思わず似たような実際のニュースと結びつけて「確かにそうだよな……」と複雑な心境になります。作者がどれだけ日頃からアンテナを張って情報を見ているのか、驚かされます。

 

 加えてその「現実描写」に対して、作者のメッセージがどストレートでぶっ刺さる。作者なりに世の中の歪みに対して色々思うところがあるんだろうな、これが作者なりの答えなんだろうな、というのを随所に感じます。

 

 個人的に一番好きなセリフは「有名税って何?(中略)傷つけられる側が自分を納得させる為に使う言葉を、人を傷つける免罪符に使うな……!」という妹ルビーの叫びです。

 

 といった社会風刺的な側面もあるので、ギャグパートとの緩急がよくて最高です。

 今のところ既刊は単行本3巻ですし、ジャンプ+のアプリから初回全話無料で読めるので、一味変わった漫画を読みたいという方はぜひ読んでみてください。

 

 

 とにかく最高に面白いんですよ。

 第一章幼年期編、第二章芸能界編、第三章恋愛リアリティショー編等の章展開がスピーディなので、飽きることなくグイグイ世界観に惹き込まれます。

 

 

 初回は以上となります。

 是非読んでみてくださいね。

 

 それではまた。

 

 よしなに。

*1:引用:赤坂アカ、横槍メンゴ『推しの子』第1巻、集英社