けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【感想】第47話_「大人」が見てきた「才能」の世界【推しの子】

Hatena

 ども、けろです。

 2.5次元舞台編からどっぷり重たい"大人の仕事"の空気感を漂わせている『推しの子』ですが、個人的にこの空気感最高です。解像度の高さというか、赤裸々にその職業にまつわるリアルな側面を描いていて、「現実はこうなんだぞ」というのをまざまざと突きつけられているような気がして、胸が苦しくなると同時にどうしようもないほど惹きつけられます。

 

 というわけでやっていきましょう、推しの子感想回です。

 

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1.漫画家の職場訪問!

 

 役者陣で訪れた『今日あま』作者の自宅。

 ここでのみんなのやりとりというか掛け合いが好きです。

 先生に塩対応される鳴島メルト、漫画家の仕事場に来れて嬉しそうなあかねちゃん、淡々と語るアクア等々。

 ストーリーの進行上無駄な演出は一切ないので、そういった意味で「日常回」というのは少し違う気もしていますが、こういう淡々と進められていくストーリー展開、めちゃくちゃ好きです。

 

 これは僕の漫画観というか、あくまで僕の感想なんですが、今回の話って「これ!」っていう山場や見せ場があるわけじゃないと思うんですよね。

 あるのは各キャラクター達が淡々と「職場訪問」という機会を通じて色々な話をしていく、というシンプルな進行なので、そういう意味で「今週のあのシーンやばかったよね!」みたいな盛り上がりがあったわけではないと思ってます。

 

 それでもこれだけ惹き込まれるのは、恐らく各キャラクター達の設定や描写がきっちり固まっているのと、淡々とした流れの中にクスッと笑えるギャグパートが差し込まれていたりといった、良い意味の「ムラ(波と言い換えてもいいかもしれません)」があるからだなぁと。

 

 特に今回は「漫画家の生の意見を聞く」という話の性質上、語られていくのは当然「プロの世界でしのぎと命を削って作品を生み出す作家の声」であって、だからこそ『今日あま』原作の吉祥寺先生の「基本的に週刊連載って人間のやる仕事じゃないから!」というギャグテイストのぶっちゃけも、「漫画ってロールシャッハテストの詰め合わせみたいなものだから」というしっかりした価値観にも説得力があるんだなぁと。

 

2.「大人」だから見える世界

 

 加えてこの先生は、アクア達が演じる舞台作品の原作者の先輩であり、元アシスタント先の先生という関係性で、しかもその元アシスタントである後輩の方が先に大ヒット作を飛ばしてスターダムを駆け上がっていったという複雑な関係。

 そんな、子供の彼ら(といってもアクアは精神年齢30代なので厳密には違いますが)からは出てこない、「清濁併せ飲んでプロの世界で生きている大人」だから言える言葉っていうのがめちゃくちゃ響くなぁと。

 

 もちろんこの『推しの子』という作品は、どちらかといえばポップテイストな作品で、「芸能」を中心としたエンタメ×サスペンスというテイストな作品なわけですが、だからこそそんな中にあってこういう「大真面目に辛さや苦しさを語る回」というのが一段と映えるわけですよ。

 

 特に彼女のような、「厳しい漫画の世界で一定の成功は収めたけれど、上には上がいることを痛感してしまった人」から発せられるリアルさっていうのはたまりませんね。

 

 売れた結果増長していく作家、作家に物申せなくなる編集、その結果生まれるのは強い自尊心と絶対の自信を持っ(てしまっ)た売れっ子作家。しかも今回に関しては若くして成功した作家なので、そりゃ確かに自分の才能に対して信頼を置くよなぁと。もちろんそれ自体が悪いというわけじゃありません。メディアミックスで自分の作品が改悪されていたり、的を射る指摘をしてくれない外野がいたりすれば、そりゃ「自分の作品を守れるのは自分だけ」という価値観が作られていっても不思議じゃないし、それは良い側面もあると思います。

 

 

 そんな作家を近くで見ていて、彼女は何を思ったんだろうか。

 もちろん言いたいことは色々あるんだろうけれど、それを含めたとしても彼女にとってアビ子先生というのは「自分が味方をしてあげないといけない後輩」なわけで、だからこそ複雑な心境を押し殺して「ごめんね」とアクア達に言ったんだなと。

 

 

 もちろんアクア達の言い分もめちゃくちゃにわかります。というか先週までの脚本家にスポットを当てた回を見てしまったら、どちらかといえば僕は彼らの味方です。彼らの舞台がいいものになってほしいし、あれだけ苦労して脚本を書き上げた脚本家のGOAさんには舞台を降りてほしくないし。

 

 だからめちゃくちゃ複雑なんですよ〜〜〜〜。

 アクアは「ディスコミュニケーションのせい」と言っていたのでこれがどうにか丸く収まってくれるんだろうとは思うんですが、どういう流れを経ていけばこれが円満に収まるのか想像がつきません。なんならここから一悶着ありそうですし。

 

 

 来週あたりアビ子先生とバッチバチにやり合う展開だったとしても不思議じゃありませんよこれ。

 

 

 

 というわけでまた来週。

 

 

 よしなに。