けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【感想】二宮匡貴/鳩原未来の関係性に死んでいるオタクの呻き【ワールドトリガー】

Hatena

 ども、けろです。

 最近、労働の合間に『ワールドトリガー』という作品にハマっています。連載開始が2013年なのでほぼ10年遅れですが、それもこれも今年1月に公式が開催した「79話無料公開」という罠のせいです。

 

 

 ちなみに当時は #ワートリ初読み感想 などという奇特な企画を勝手に開催し、ワートリの感想を1話ごとに呟くという(どう考えても見切り発車であることが目に見えてる)遊びを行っていました。ちなみに完走まで4ヶ月弱かかりました。

 

 

 さらにちなむと、上記の79話読破後およそ1週間で既刊全巻を大人買いしました。大人になることに悲観している少年少女、好きになった漫画をクレカ一括で買えるようになるのは悪くないぞ。

 

 というわけで本ブログでもゆるくワートリについて捲し立てようと思い、記念すべき1本目の記事を何にするかあれこれ考えたんですが、やっぱり最初はこれにしようと思いました。

 というのもね、27巻236話がね、あまりに凄まじかったのでね……

 

 

 改めて当時の自分の感想を見返してますが、マジでひどくて笑っちゃった。なんだよ「ウワーーーーーーーーーッッ!!」って。

 

 というわけでn週遅れですがやっていきましょう、ワートリ感想回です。

 ※念の為言っておきますが、各キャラクターに関するあれやこれは全部僕個人の解釈の域を出ません。デカすぎて置き場に困った感情を、頑張って言語化したものだと思ってください。全部呻き声です。

 

 

 

1.二宮匡貴の不器用な優しさの話

 

 二宮匡貴という男を一言で表すなら、「不器用すぎる男」だと思う。それは自身の思いを"言葉”という、他者と共有可能なコミュニケーションツールに変換したり、感情を"表情"という方法で外界に出力したりといった、兎角"自己の内面を、他者に対して十全に伝わる形でアウトプットすること"が不器用で、不得手なように見える。

 

 それはなんというか、これまでの物語での「二宮匡貴」という男の描かれ方が、スマートで、無駄がなく、どこかとっつきにくくミステリアスな上司ポジションとしての側面が強かったことに起因するような気がしている。

 

 初めてそのご尊顔が描かれた第103話での「ぬるい解説しやがって……」という台詞がその最たるものだと思うが、とにかくこれまでの二宮匡貴という男に対する個人的な印象というのは、「(俺だけはその魅力に気づいているが)表面的にはドライで冷酷な男」だった。括弧内の音声ボリュームがデカすぎる気がするのは、きっとTwitter(XなどというSNSは私の中では存在しない)上の人格のせいだと思う。

 

 A級1位・太刀川隊の出水に弟子入りしたのも、単に自分自身の更なる研鑽のためだと思っていたし、この情報を知った時も、(こいつ……強さのためなら歳下であっても躊躇なく頭を下げられるのかよ……あざといな…)くらいにしか思っていなかった。嘘、大分ハートキャッチされた。

 

 ただ、それまでぼんやりと積み上げてきた「二宮匡貴像」というイメージを根本からひっくり返されたのが、第236話「鳩原未来」だった。

 第一、二宮語りの過去回想なのにサブタイトルが「鳩原未来」なのがどうかしてる。どうかしてる(確信)。

 

引用:葦原大介『ワールドトリガー』集英社, 第27巻, p101

 

 遠征任務の参加条件を満たしてなお、鳩原の"人を撃てない"という欠点を挙げられ、当期の遠征任務への参加資格を剥奪された二宮隊。

 「遠征任務に行きたなら個人で申請したらどうだ」と鬼怒田に諭されるも「それじゃ意味がない。遠征に行く目的があるのは鳩原です」と即座に反論。

 この時点で大分こちら側の脳を焼きにきているが、二宮はここで食い下がらず、「A級1位になったら(≒他のどの部隊も鳩原擁する二宮隊に勝てないと証明できたら)遠征に連れて行け」と肉薄。

 

 で、当の二宮本人はその足で太刀川隊の射手・出水の元を訪れ、弾撃ちを教えてくれるよう懇願。

 これまでは「自分自身の更なる研鑽のため」だと思われていたその理由が、実は「A級1位になって鳩原を遠征に連れていくため」だったと明かされ、二宮オタクの自分はその事実に完全に雄叫びを上げることしかできなかった。いや本当に。叫んじゃったもん。

 

引用:葦原大介『ワールドトリガー』集英社, 第27巻, p105

 

 二宮自身、別段鳩原のことを「足手纏い」だと思っているわけではないと思う。足手纏いだと思っているなら自分の部隊から外せばいいはずだし、出水に師事したりなんて回りくどいことはしないはずだからだ。

 

 二宮は、ただ許せないのだと思う。鳩原未来という、ランク戦でも実力を残している狙撃手の実力が("人を撃てない"というただ一点のみで)正当に評価されないことが。

 二宮自身がそれを「欠点」だと思っていないからこそ、そしてそれを矯正しようとすることが鳩原に対してどのような苦痛をもたらすのかが分かっているからこそ、二宮は「今の隊の在り方のままA級1位を目指す」という方針を打ち立て、それを実行するために出水に師事したのだと思う。

 

 兎角、そのスマートな風貌からは想像もつかないくらい二宮匡貴という男は優しく、部下思いなのだ。

 ただその優しさが、彼の"表情の乏しさ""言葉足らず"というアウトプット能力の低さに起因して相手に十二分に伝わり切っていないのが非常に歯痒い。言葉は相手に伝わって初めて実体を獲得する不可視の存在であるがゆえに、二宮の言葉を間違った意味で受け止めた人もいるに違いない(遠征選抜試験での絵馬が抱いていたフラストレーションもそれに起因しているように思う)。

 

 ただ、それでも二宮匡貴という男は、部下を遠征に連れていくために自らのプライドを捨てて歳下に頭を下げられる、優しい心の持ち主だということもまた、厳然たる事実だと思う。あと雪だるま作るお茶目さもある。

 

 ("人を撃てない"鳩原を遠征任務に組み込めなかった)二宮と("人を撃てない"チカちゃんを遠征任務に組み込ませた)オッサムの違いはなんだろうとずっと考えていて、それはまた別の機会に。 

 

2.他者の優しさに罪悪感を感じる鳩原未来の話

 

 一方で鳩原未来はどうかというと、こちらもまた難儀な性格をしてやがるぜ、と思う。あくまで自分主観だが。というよりこの女、いろんなキャラクターにデカすぎる爪痕を残してるくせに本編で全然描かれないから空想であれこれ補うしかなくて非常に困る。

 「人を撃てない」という最たる特徴については『他人を傷つけたくない』という彼女の気質によるものだが、二宮や二宮隊の面々から向けられた優しさに対して、彼女は「罪悪感」を抱えてしまうタイプだったのだと思う。

 「この5人で遠征に行こう」と言ってもらえたこと自体は嬉しかった一方で、『自分のせいで遠征に行けなかった』という罪悪感を抱えていたのではないだろうか。

 

引用:葦原大介『ワールドトリガー』集英社, 第27巻, p126

 

 だからと言って二宮隊の面々に何も言わずに「密航」という最後の手段を選ぶか?という点についてはもう鳩原の口から直接語られるまでは完全にブラックボックスというか、鳩原が答え合わせをしてくれるのを待つしかありません。いつになりそうですか?

 

 

3.二宮匡貴と鳩原未来の関係性の話

 

 ここまでの話を総括して何が言いたいかというと、二宮匡貴と鳩原未来は、本人達が望むと望まざるとに関わらず、どうしようもないくらい食い合わせ、というより互いの精神性の相性が悪かったのではないか、ということである。

 これは決して互いが嫌い合っていたとか苦手意識を持っていたとかそういう話ではなく、二宮も鳩原も、互いを想いやっていたはずなのに、当の本人達の気質が故にすれ違いを起こしてしまった、ということなのではないか。

 

 二宮は良くも悪くも「自己肯定感」という言葉からは無縁というか、自己を定義するのはこれまでの自分の過ごし方でしかなく、仮に目標に届かなかったとしても、その時に感じるのは「自分はなんてダメなやつなんだ」という悲観ではなく、「自分の目標の間にはこれだけの差がある。埋めるためにできることは……」という振り返りであり、その眼差しは常に"より良い未来"に向いているのだと思う。まぁ傍目で見ている分には(スゲ〜ストイックだなぁ)と気楽に思えるが、自分の身内にいたら多分コンプレックスで病む。

 

 もしかすると誰にも見られないところで一人感傷的になっている可能性もなくはないが、現状与えられている情報を組み立てていくと、自分の中では上記のような二宮像が出来上がった。

 

 一方で鳩原はというと、こちらは良くも悪くも「自己肯定感」が低い。というよりも、自分の「できること」よりも「できないこと」に対して圧倒的に意識を向けがちなのだと思う。

 "他人の武器だけを狙って狙撃できる"というのはそれだけでとんでもない長所(個人的にはツインスナイプと同じくらいのトンデモ芸当だと思っている)であるはずなのに、"でも自分は人を撃てないから……"と自分の短所を自分の中で大きくし、自分を過度に責めてしまう。

 

 その結果、二宮達が共にA級1位を目指そうと声をかけてくれた時、鳩原は「二宮隊のみんなに申し訳ないよね……」という思いになった。二宮隊の面々は誰一人として迷惑さなど感じていないはずなのに、だ。

 

 だから鳩原は「密航」を選んだのではないだろうか。

 

 自分が二宮隊にいることで周りの人達に負担を強いてしまうことに耐えられなかったから。隊長である二宮に、自分のような"何もできない人間"のために粉骨砕身させることがたまらなく申し訳なかったから。

 

 もうなんというか、早く近界で再会して一晩中語り明かしてほしくなる。この二人の会話シーンだけで多くの読者、もとい死に損なっている亡霊達がやっと成仏できると思う。成仏させてください、マジで。

 

 

 と、ここまで約4,500字も呻き続けていた。怖。

 二宮匡貴、知れば知るほど底なし沼なので勘弁してほしい。と同時に早く鳩原と再会して、普段他人には見せないくらい狼狽えているところを見せてほしい。

 

 ワートリ、なんでこの10年間読んでなかったのかと自分を問い詰めたくなる作品なので、今後もちょこちょここんな感じで呻き声を書き殴りたいと思います。

 

 それでは。