ども、けろです。
ここ最近はずっと本誌回や呪術映画の考察記事ばかり書いていて、すっかり疎かになっていことに今更ながら気づいたので、ここらで一丁記事を書こうと思い至りました。
というのも、今週のジャンプ7号掲載の呪術廻戦171話で明かされた「彌虚葛籠(簡易領域)」と「領域展延」の違いがそれはそれはややこしいものだったからです。
呪術廻戦は時折難解なルールや設定が登場するのですが、今回も例に漏れずかなり難解でした(作品に対する批評ではなく、単に「難しい設定があるよね」という事実の話です)。
というわけでやっていきましょう、呪術廻戦解説回です。
なお大まかな内容に関しては下記の感想記事でも軽く触れておりますので、よければこちらも。
kero-entame-channel.hatenablog.com
1.簡易領域:「術式の必中効果」を中和する
まずは作中で何度か登場している「簡易領域」から。なおここでは第171話にて披露された「彌虚葛籠」は「簡易領域の原型である」という作中の描写から「簡易領域」と同一のものとして扱います。
1-1.「簡易領域」とは何か
「簡易領域」とは、「領域展開」に付与されている「術式の必中効果」を中和するものです。
そもそも「領域展開」には、「領域内で発動した、(領域に)付与された術式は絶対に当たる」という性能があります。これが「領域展開」が呪術戦の頂点と呼ばれる理由です。元々強力無比な術式が、領域内にいる相手には絶対に当たるというのは、それだけで大きすぎるアドバンテージです。
実際に特級呪霊・真人の領域展開「自閉円頓裹」は、真人の持つ「無為転変」という、対象に掌で触れることで魂の形を自由に作り替える術式が必中するという「領域に引き摺り込んだら勝ち確」という反則すぎる性能を持っていました。
「簡易領域」は、その「術式の必中効果」を無効にするものです。真人を例に出して考えると、仮に「自閉円頓裹」に閉じ込められたとしても、「簡易領域」の範囲内であれば彼の術式を受けずに済む、といえます。
1-2.「術式不要」というメリット
作中では「蘆屋貞綱により考案された弱者のための領域」という説明がありましたが、「簡易領域」とはその名前の通り、「領域展開を使えない者にとっての領域」なわけです。作中で三輪霞が使用しているように、これは術式ではなく呪力操作の延長なので、「領域展開」が使えない者であっても使用可能というのが大きなメリットです。
後述する「領域展延」とは異なり、術式そのものを中和・無効化することはできないので、相手の術式を直接受ければ当然ダメージは入ります。
ただ、「必中効果」という最大のメリットを中和することで、展開された「領域」の中でも自身を守ることが可能となります。
1-3.作中での使用者
1-3-1.憂憂
作中では渋谷事変にて特級特定疾病呪霊・疱瘡神(正確には「疱瘡婆」)の領域内に閉じ込められた冥冥が、呪霊跋除のために弟・憂憂に命じていました。憂憂はこれにより疱瘡神の領域内にいながらにしてその術式の必中を免れることに成功していました。
1-3-2.メカ丸・与幸吉
他には真人と対峙したメカ丸こと与幸吉が自分の身を守り、真人に有効打を与えるための戦法としてこの方法を採っていました。ただ「門外不出」という"縛り"があるため完全な形での再現はできておらず、特殊なカートリッジに封じ込めて「ストック」として保持していました。
1-3-3.三輪霞、東堂葵
京都姉妹校交流会で京都校の三輪霞が使用した際は、防御ではなく攻撃のために用いられましたが、これは技術の応用と考えていいでしょう。
また実際に発動しているシーンは描かれませんでしたが、渋谷事変での真人との一戦から京都校の東堂も「簡易領域」が使えることが明らかになっています。
いずれも「必中効果を持つ相手の領域内で、相手の術式を受けないように身を守る」ために用いられることからも、これが防御に適した技であることが分かります。
2.領域展延:「術式効果そのもの」を中和する
次は「領域展延」です。この性能説明がかなり分かりづらいので、なんとかついてきてください。
2-1.「領域展延」とは何か
「領域展延」とは、「自身の体に膜のように薄い領域を展開すること」です。そしてそれが持つ効果として、「触れた者の術式効果を中和して無効化する」というものがあります。
これは文字通りの意味で、「展延」を纏っている者に対して術式で攻撃しても中和されかき消されてしまいます。実際に渋谷事変で漏瑚・花御に「展延」を使用された五条は、無下限呪術を中和されていました。
2-2.「領域展延」の仕組み
「領域展延」を解説する上で最も難解なのが、その仕組みです。
第171話で明らかになった「領域展延」の仕組みを引用します。
「渋谷で漏瑚や花御が見せた「展延」は、必中必殺の術式を搭載できるだけの領域に、あえて術式を付与しないことで容量を空け、五条の術式を流し込ませ無下限を中和した」
理解を難しくしている要素に「容量」、「術式を流し込ませ」といった言葉があります。一つずつ順を追って解説していきます。
2-2-1.「領域」と「術式」は別物
まず大前提として、結界術の一つである「領域を展開する技術」と、そこに「術式を付与する技術」は別物です。
前者は「相手を自分有利な空間に閉じ込めるためのもの」であり、相手を逃げられなくする・結界によるバフ効果等がそのメリットです。
後者はそれとは独立しているため、術師は「生得領域の具現化」をした後に「術式の発動(=必中効果の付与)」を行わなければいけません。
この「"領域"と"術式"は別の概念である」というのを念頭に置いてください。
2-2-2.「領域」=「水槽」、「術式」=「水」
前項の「容量」「流し込ませる」といった難解な語句の説明に戻ります。
僕は先程「"領域"と"術式"は別の概念である」と述べました。
ここで振り返ってもらいたいシーンがあります。単行本1〜2巻収録の呪胎戴天編のワンシーンで、虎杖達が少年院に現れた特級呪霊の生得領域に閉じ込められる場面です。
この「領域」を、後に五条は「術式の付与されていない未完成の領域」と述べました。つまり「領域を展開すること」と「術式を発動すること」は根本から別の概念であり、術者が「領域という入れ物」を展開した後に「術式という中身」を注入して初めて「必中効果を持った領域展開」が完成すると言えます。
つまり「領域」とは言わば「水槽」であり、「術式」はその水槽に注入する「水」と言い換えることができるわけです。この考えが「展延」を理解する上で極めて重要になってきます。
2-2-3.「容量を空ける」「流し込ませる」という言葉の意味
「領域展延」のメカニズムに関する本編の説明を再掲します。
「渋谷で漏瑚や花御が見せた「展延」は、必中必殺の術式を搭載できるだけの領域に、あえて術式を付与しないことで容量を空け、五条の術式を流し込ませ無下限を中和した」
この説明を一つずつ分解し、先程の「水槽」と「水」の例えを用いて解説してきます。
・「必中必殺の術式を搭載できるだけの領域」
「領域=水槽」ということを踏まえると、これは「術式(=水)を注入できるだけの完成度・キャパシティを持った入れ物」と言い換えることができます。
「領域展開」は入れ物と中身が揃って初めて効果を発揮するもので、注入する中身に対して入れ物が不十分であれば未完成となってしまいます。そのためこの文章は「術式がたくさん入る大きなハコを用意した」くらいに考えてください。
・「あえて術式を付与しないことで容量を空け」
ただ、「領域展延」は用意した「水槽」に「水」をあえて注入していません。
すると出来上がるのは「中身がない空っぽの水槽」ということになります。
つまりこれは「用意した大きなハコを、中に何も入れなかった」ということを意味します。
・「五条の術式を流し込ませて無下限を中和した」
最後です。これまでの流れで、術者は「術式がたくさん入る空っぽの水槽」を用意しました。
これを自分と相手の間に展開(作中では身体を覆う薄い膜として表現されていました)すると何が起こるかというと、その「空っぽな水槽」に「相手の術式が流れ込んでしまう」わけです。
これは僕の考察も含まれますが、恐らく「生得領域」と「生得術式」はセットで初めて効果を発揮します。そして何より、「本人の術式」は「本人の領域」でしか発動できません。これはもう「そういうものだから」と理解するしかないと思いますが、「自分で用意した入れ物」に「自分が持ってきた中身」を注入することで「自分の世界」が出来上がるのだとすれば、他人の「領域」を勝手に使用することはできなくて当然です。
この「他人の"領域"を使って"術式"を発動することはできない」という仕組みを用いているのが「領域展延」だと考えられます。
つまり「領域展延」とは、「自分で用意した入れ物を、あえて空っぽの状態で相手に差し出すことで相手の水(術式)の受け皿にしてしまうこと」であり、「自分の入れ物(領域)に注ぎ込まれた相手の水(術式)は効果がなくなってしまう」という技だということです。
わかりやすく説明したつもりが余計に長くなってしまって大変申し訳ないです……
2-3.「生得術式使用不可」というデメリット
一見万能に見える「領域展延」ですが、使用中は生得術式が使用できないというデメリットを抱えています。
「展延」とは「術式が付与されていない領域を纏っている状態」のことなので、その状態を維持しつつ生得術式を使うことはできない、ということですね。右手で字を書いている時に右手で別のことができないのに似ている気がします。
2-4.使用者
作中で登場した「領域展延」の使用者は、特級呪霊の漏瑚・花御の二体のみです。
恐らくこの技はその性質上、「領域展開」を支えることが条件に含まれると考えることができるので、作中でも使えるキャラクターはそんなに多くないのかなと考えています。
さて、コンパクトに収めるつもりが随分と冗長になってしまいました。
本当は「落花の情」についても触れたかったのですが、文字数がかなり多くなってしまうのでそれはまた今度。
それではまた。
よしなに。