ども、けろです。
前回、前々回と二連続で禪院真依について取り上げた記事を書き、SNSでの小さなバズりと相まって過去最高のPVでした。本当にありがとうございます。
昨日の記事を書き上げてから少し時間が空き、推しを失った悲しみをゆっくり癒していたんですが、そこでふとあることに気づいてしまいました。
というわけで今回"も"やっていきましょう、禪院真依掘り下げ回です。
これを書きながら心が死んでいくのを感じているんですが、気にせず読んでください……
1.真希の術師としての願い
禪院真依の双子の姉、禪院真希の呪術師としての夢・目標は物語最序盤でも語られており、「大物術師になり、禪院家当主になること」です。
自分を見下していた一族の連中を見返し、「個人」として強くなること、それこそが真希の術師としての命題であり、彼女が家を出て呪術高専に入学した理由でした。
ですが、第148話にてその「目標」には先があり、「当主になること」はあくまで一つの手段であったということが明らかになります。
伏黒「じゃあ真希さんが(当主になることを)やって下さいよ」
真希「今の私じゃ誰も納得しねぇしついてこねぇよ」
伏黒「納得とか…禪院家の人がどう思おうと関係なくないですか?(後略)」
真希「……まだ、私じゃダメなんだよ。私じゃ、真依の居場所を作ってやれない」
目標であったはずの「当主就任」を打診された真希はそれを固辞し、その理由として「真依の居場所を作ってあげられないこと」を挙げています。
つまり真希の目標は「当主になることそれ自体」ではなく、当主になることによって作り出せる「妹にとっての居場所」だったということです。
自分ではなく、血を分けた妹を虐げた一族を見返し、その身を賭して妹が笑って過ごせる場所を作る。それこそが真希の目標であり、願いだったわけですね。
姉妹愛…………(デッカいため息)
2.互いを縛り続けてしまう「双子」の宿命
そんな真希と真依の関係性において、第149話で明かされた最たるものが、「呪術において一卵性双生児は同一人物とみなされる」というものです。
つまり「真希は真依」であり、「真依は真希」であるということです。
これが何を意味しているかというと、互いの存在が互いを縛り続けているということです。
真希が強くなるために努力をしても真依がそれに続かなければ意味がないし、真希が天与呪縛によって術式を失っても真依に術式が残っていればそれは不完全なままになってしまう。
だから真希は甚爾と比べて一般人並みの呪力が残っていたし、甚爾が五感で呪霊を認識していたのに対して真希は特注の眼鏡がなければ呪霊を見ることができませんでした。
これは真依に対しても言えることで、真依には「構築術式」という非常に強い術式が刻まれていたにも関わらず、真希が天与呪縛によって術式を失っているがために「弾丸一発を作り出す呪力量」しか与えられませんでした。
彼女達が双子として生を受け、強い絆で結ばれているからこそ、互いの存在が互いにとっての「足枷」になってしまっていたわけです。
えっっっ何そのバッドエンド以外の終わり方が存在しない設定は………
3.「願い」におけるパラドックス
これらの設定を踏まえると、悲劇的な結論が導かれてきます。
第149話で真希は「天与呪縛の完成」を迎え、「呪力から解放された完全な肉体」を手にするに至りました。それは正しく彼女が求めていた「強さ」であり、彼女が「禪院家当主」になるためにはなくてはならないものでした。
つまり真希は、「当主になることで守りたかった真依という掛け替えのない存在」を失うことで初めて「当主になれる強さ」を手に入れたわけです。
真依が死ぬことで真依を守れる力を手に入れることができ、逆に当主になることを諦めてしまえば真依を守ることができなくなってしまう。
どこまでいっても袋小路の星の下に生まれてしまった真希と真依。
真希の願いは、彼女達が双子として生まれたその瞬間から叶わないことが決まっていたわけです。
は???????
ロミオとジュリエットか??????
大切な人を守るための力は、大切な人を捨てることで手に入るものでした。
いやいやいやいや。
えっ?????
そんな中真依が選んだのは、自分の命を燃やして呪具を生み出し、真希に託すというものでした。
「痛いのも怖いのもうんざり」と言っていた真依が、人間にとって根源的な恐怖であるはずの「死」を笑顔で選択して旅立ったの、もはや「愛情」という言葉では形容しきれない複雑な読後感があります。しんどすぎる。
というわけでやっと真依への言語化の大半が完了しました。
これで安らかに眠れるという安堵感と、言語化を通して真依の死を鮮明にリフレインするというリスカの痛みを同時に経験しているわけですが、次回以降はまた別の記事を書いていこうと思います。
それではまた。
よしなに。
*1:引用:芥見下々『呪術廻戦』第5巻、p149、集英社