けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【考察】乙骨憂太は敵か味方か_後編・敵説【呪術廻戦】

Hatena
 はい、後編やっていきます。
 後編は「乙骨敵説」についての考察になります。
 
 早速やっていきましょう。
 

1.狗巻の腕を落としたのは虎杖/宿儺

 

 前回の「乙骨味方説」とは真逆の仮説になりますが、検証していきます。
 
1-1.領域の影響範囲と時間的猶予

 

 狗巻のいた場所と宿儺がいた場所は(公式で言及されている)マップ上では確かに離れていますが、2つの間には時間にしておよそ1時間ほどの猶予があります。
 つまり、狗巻が虎杖達から離れた場所にいた、という情報からは「だから宿儺の領域に巻き込まれたわけではない」という結論を直接導くことはできないのです。
 であるなら、狗巻が宿儺の領域に巻き込まれた可能性も十二分に考えられます。問題はなぜ領域に巻き込まれて腕だけで済んだのかですが、個人的には2点ほど仮説が挙げられます。
 
仮説①:宿儺があえて狙いを外した
仮説②:狗巻自身が呪言等で肉体を守った(が、腕は間に合わなかった)
 
 
 ①に関しては「なんじゃそりゃ」となるかもしれませんが、よく考えてみると宿儺が魔虎羅を屠るために領域を展開した際、宿儺のすぐ近くには重面春太がいたはずです。彼の術式は「幸運を蓄積する」ですが、その術式効果も七海との戦闘で使い切っていますから、「領域範囲内にいる生物・無生物に対して術式が浴びせられる」としたら彼が無事でいる理由が分かりません。
 
<追記(2021/02/12)>
 読み返していて、宿儺が領域展開したのは魔虎羅によって吹き飛ばされた先で、重面は伏黒と一緒にいたので領域の必中効果範囲外でしたね。失礼しました。
 
 例えば一定強度以上の呪力を持っている者は、後々戦うのが楽しみだからという「気分」で狙わなかったとかでしょうか。
 ②については、狗巻の呪言が自身にもかけられるものなのか分からないため確証はありませんが、あり得なくはないかなと。あるいは彼の術式が無生物に対しても効力を発揮するのであれば、周囲の建造物等を呪言で強化して守った、等も考えられます。
 
1-2.136話→137話の時間的空白

 

 まず136話、偽夏油が虎杖達の前を去った時間ですが、およそ23時30~40分。対して乙骨が渋谷に現れた時間は深夜1時30分でした。
 月日までが明言されたわけではないため、乙骨が渋谷に到着したのが実は11月2日以降という可能性もありますが、137話冒頭に登場した子供がコンビニで弁当を貪っているシーンがあることからも、(鮮度的な意味で)そこまで日数が経っているとも考えにくいです。
 時間にして約2時間この間になにかがあったとしたらどうでしょうか。
 137話の時間軸で虎杖がパンダ達と一緒にいるとしたら、まず彼らが真っ先に虎杖を保護するでしょう。日下は虎杖死刑に賛成ですが、パンダ達高専組は虎杖との交友関係もありますから簡単にハイ殺しましょうとはならないはずです。九十九もいますしね。
 であるなら、そうならなかった理由があるはず。
 これ以上虎杖を地獄に落とすような展開は正直胃潰瘍になりますが、可能性としては、
 何かしら/誰かしらとひと悶着あるか、高専関係者(新キャラ?)が現れて虎杖を連行しようとする
 ↓
 虎杖の逃走を止めようとして狗巻が巻き込まれるor高専関係者が虎杖擁護派を攻撃
 などでしょうか。もうこの際記憶改変系の術式使いが現れてくれれば一気に考察が解決するのですが、正直ここら辺は妄想の域を出ませんね。
 ただ、少なくとも時間軸的に空白があるので、この間で虎杖/宿儺が狗巻の腕を落とすに至った何かしらの出来事が起こった可能性というのは十二分に残されます。
 

2.五条海外渡航の謎

 

 京都姉妹校交流会編の冒頭、五条は海外に行っていたことが明らかになっていますが、その目的は未だ明かされていません。
 この目的が海外出張中の乙骨に会いに行っているとしたら、五条は彼に虎杖の存在を伝えているはずです。そうでなければ137話で五条先生の教え子とか関係ないですよ」という台詞は出てこないはずです。
 
 ここは正直味方説にも使える根拠だと思っているのでなんとも言い難いですが、この説で使うとするなら五条から虎杖のことを聞かされていたのに、それでもなお殺そうとするのはなぜか」という逆説的な問いとなります。
 虎杖のことを聞いていてなお殺そうとするからには、彼なりに確固たる確信があって「虎杖が狗巻を傷つけた」と思っているということではないでしょうか。
 

3.乙骨の人柄

3-1.友情に対する狂気的な側面

 

 ここからは前述の2つの仮説が正しいという前提に乗った上で、そもそも何故乙骨は虎杖を殺そうと憎悪しているのでしょうか。
 というのも、虎杖と乙骨は境遇がかなり似ています。どちらも特例として秘匿死刑の対象となり、五条に救われる形で呪術師としての道を歩み始めました。虎杖が呪術界に巻き込まれたのは確かに彼自身が宿儺の指を食って受肉したからですが、そこからに関しては彼は大きな流れの被害者であり、彼の境遇に共感こそすれ、殺意を抱く理由はなんだろうか、と。
 そこで彼の人柄を前日譚である0巻から読み解いてみると、彼の性格は「友人傷つけるやつ絶対許さないマン」なんですよね。
 
 例えば真希が夏油に蹂躙されたときは、「ぶっ殺してやる」と殺意を燃やしていますし、狗巻の術式をコピーしたときは「そうだ、僕の友達はすごいんだ……それをお前は……」と憎悪をあらわにしています。
 なんなら彼自身の戦う理由が大儀やら正義やらといったデッカい大義名分ではなく、「僕が生きてていいって思うために、お前を殺す」とかなり独善的で自己中心的な理由です。そしてその「自己」の輪の中には彼の友人も含まれている。
 
 
 乙骨は幼少期に目の前で幼馴染であり婚約者の里香を事故で亡くし、その後も(里香の呪霊化という影響もありますが)心を許せる友人というものに恵まれませんでした。
 そんな時、「独りは寂しいよ」と五条に諭される形で入学した呪術高専で、彼は真希・パンダ・狗巻という、自分の境遇を理解した上で受け入れてくれる友人と出会いました。乙骨にとって友人というのは、自分の人生を変えてくれたかけがえのない存在であり、何物にも代えがたいものなのです。
 
 だからこそ友人を傷つけられた時の彼は(他の少年漫画の主人公と比べても)狂気的な怒りを発露しているし、それはきっと相手が虎杖であっても同様なのかもしれません。
 
3-2.虎杖とのスタンスの違い

 

 加えて乙骨は、「折本里香」という(自身が呪いをかけた)怨霊によってこれまで多くの人を傷つけてきたことを悔やみ、自らその罪を背負って死のうとしていました。ここが虎杖との違いです。
 
 虎杖は宿儺という呪いを体内に宿した状態で、生きて戦おうとしています。宿儺の領域によって多くの一般人を鏖殺した直後こそ「今すぐ死ねよ」と絶望しますが、すぐに戦わなきゃ、そうじゃなきゃ俺はただの人殺しだ」と前に進んでいます。
 乙骨は「自分の罪を受け入れ、自分が死ぬことでそれを償う」というキャラクターであり(0巻終盤では前向きになっていましたが)、虎杖は「自分の罪を背負い、それでも前に向かう」キャラクターとして対比されています。
 
 乙骨からしてみれば、宿儺に乗っ取られていたとはいえ多くの一般人に手をかけたのですから「その罪を償え」という発想になってもおかしくはないと思いますね。
 もし乙骨が敵になったとするなら、ここら辺の主人公像の違いが詳細に描かれるとめちゃくちゃうれしいです。
 
 
 乙骨敵説としては以上になります。
 どうも味方説と比べると根拠に弱い気がしますが、いかんせん描写が少ないのでどちらとも断言できませんね。
 考察とは関係ない個人的な展望を言うならば、乙骨は最強の敵として虎杖/宿儺と殺し合ってほしいと思っています。鬱になるくらい暗くて重くて救いのないストーリーがめちゃくちゃすきなので。
 味方説と敵説の両方を語ることでどっちに転んでいいような保険をかけておきます。
 
 来週は休載ですが、ゆるっと続きを待ちましょう。
 
 よしなに。