けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【考察】BLEACHとの相関から見る天元様と御三家の関係性_第1回【呪術廻戦】

Hatena

 ども、けろです。

 

 別垢の方に投げていた考察記事の転載になります。

 僕自身、BLEACHに狂っている人間なのでこういう作品同士を俯瞰して考えるメタ考察が捗りますね。

 

 めっちゃ嬉しい話ですが、このブログを考察系Youtuberのクロさんに取り上げてもらいました。クロさん自身いろんな考察動画をあげていてめちゃくちゃ面白いので、よければ見てください。

youtu.be

 

 

 以下目次

 

 

0.はじめに〜概要・諸知識のおさらい〜

 まず考察を始めるにあたり、BLEACHと呪術廻戦の各要素を軽くおさらいしておこうと思います。それぞれの世界における造語や概念の紹介です。既読勢の方は飛ばしてもらってかまいせん。

 

0-1.BLEACH

・霊力:死神や虚、破面の操るエネルギーの総称。身体能力や技の威力等は、これが高ければ高いほど増す。

・三界:現世、虚圏(ウェコムンド)、尸魂界(ソウルソサエティ)の総称。魂は基本的にこの三つの世界を流転する。

・霊王:上記の三界を結び、世界を安定させるために存在する「楔」、死神たちはこれを実在の「王」として崇めている。

・四大貴族:四楓院家、朽木家、綱彌代家、詳細不明の一家を合わせた貴族の総称。かつてはこれに志波家を加えて五大貴族と呼ばれていた。

 

0-2.呪術廻戦

・呪力:後悔や恥辱、怨嗟や恐怖といった、人間から漏出した負のエネルギー。肉体に刻まれた術式に呪力を流すことで術式が発動したり、肉体を強化したりできる。これが集合認識として折り重なることで呪霊が生まれる。

天元:国内主要結界の要であり、不死の術式を持つとされる存在。

・御三家:五条家、禅院家、加茂家からなる呪術界古参の総称。

 

 おそらくこれくらい説明しておけばここから先の考察がスムーズに読めるかと思います。

 原作未読の方、特に呪術廻戦の方はまだ14巻ですし、現在アニメも放送中ですので追いかけてみてください。確実に今の漫画界でトップクラスに面白いですし、今後も語り継がれる名作なので。

 

 前提として、呪術廻戦はこれまでの有名な少年漫画を下地に作られている、ということも併せて書いておきます。

 例えば主人公虎杖とその周囲の主要キャラクターはNARUTOの生徒3人+先生1人という構図を模していると思われます。虎杖もナルトも体内に化け物を宿していますし、先生が顔の一部(カカシ先生は鼻から下、五条先生は鼻から上)を隠していたり。

 また、作中に登場する「縛り」の概念(自らリスクを負うことで相応のリターンを得ること。例:自分の能力を相手にバラすことで能力が底上げされる)はHUNTER×HUNTERの「制約と誓約」由来ですね。

 声に出して読みたくなる音の響き(例:布留部由良由良八握劍異戒神将魔虎羅)はBLEACHからきていると思いますし、呪術廻戦は良い意味でこれまでの王道少年漫画のエッセンスを取り入れ、一つの作品として昇華させています。

 これを「パクリ」と呼ぶ不逞の輩がいるんですが、そういう人たちはフィクション作品におけるオマージュの概念を知らないようなので無視しましょう。

 

 では本題いきましょう。

 あらかじめ言っておきますがジャンプ本誌の内容にもガッツリ踏み込んでいるのでネタバレ注意です。

 

 仮説:呪術廻戦における天元様は、御三家によって作られた呪術界の罪であり、公益のために贄とされた人間である。

 

1.BLEACH藍染惣右介、呪術廻戦の偽夏油の相関

 根拠①:藍染、偽夏油のそれぞれの目的が類似している。

 そもそも何故天元を考察する上で藍染や偽夏油といったキャラクターを引っ張ってきたのかですが、これはこの2人が作中でかなり重要な立ち位置を担っているからです。この2人を考察の出発点とすることで前述の大仮説の検証ができるのではないかと考えました。

 まず、各作品における各キャラのそれぞれの目的、大義を明らかにしましょう。

 

 藍染惣右介:霊王の殺害。現存の世界の転覆。

 偽夏油:現呪術界の転覆、及び新たな世界の創出。

 

 まず藍染ですが、彼は「霊王」という、世界を安定させるために尸魂界(≒四大貴族)が一人の男を人柱とし、生きた楔にしている事実に落胆し、それを変えようとしていました。霊王を「あんなもの」と呼んでいる(単行本48巻参照)ことからも、霊王(と、その真実を知らずにのうのうと平和を享受している世界そのもの)に対して嫌悪感を抱いていることが分かります。

 その目的のため、彼は「崩玉」という、周囲の者の願いを叶える物質を作り出し、それを元に「破面」を作り出しました。死神と虚という相反する存在の境界線を取り払うことで肉体・霊圧の壁を破壊することで生まれた「死神化した虚」は、後に護廷十三隊と敵対する勢力となります。

 また、彼は同じく崩玉を使役して「死神の虚化」の実験も行っていました。平子真子らがその犠牲者ですね。

 

 ここで覚えておいてほしいのは、藍染惣右介は現行の世界を転覆しようと画策しており、そのために諸勢力と手を組み、既存の枠組みに囚われない新たな存在(破面虚化)を生み出した、ということです。

 

 では、翻って偽夏油です。

 彼の目的は作中でもまだ完全に開示されたわけではありませんが、週刊少年ジャンプ2021年8号に掲載された第136話で彼は「呪力の最適化」を口にしており、「私は呪霊のいない世界も牧歌的な平和も望んじゃいない。非術師、術師、呪霊 、これらは全て"可能性"なんだ。"人間"という"呪力"の形のね」と述べています。

 そして彼はその「人間の可能性」を模索し、作中の時間軸でおよそ100年ほど前にとある人体実験を行いました。それが「呪胎九相図」と呼ばれる、"人間と呪霊の間に生まれた九体の呪物"を生み出すに至ります。

 

 ただ、この九相図というのは目的ではなくあくまで手段の一つであり、"人間"という、呪力を生み出す存在を新たな形へと導こうとしているわけです。だからこそ現在作中で大盛り上がりを見せている「渋谷事変編」で彼は今の呪術界の固定化したあり方を転覆し、世界に混沌をもたらそうとしています。

 

 ここで偽夏油の目的をまとめてみましょう。彼は現呪術界を転覆し、人間の新たな形を(既存に縛られない形で)模索している。そのために彼は人間の敵とされる呪霊勢力・呪詛師とも手を組み、これまでの"人間"とは異なる存在を生み出そうとしている、というわけです。

 

 つまり偽夏油も藍染も、既存の世界のあり方に疑問を呈し、それを覆すためにこれまでとは異なる存在を自らの手で生み出したのです。

 

 結論①:呪術廻戦における偽夏油の立ち位置・キャクター像はBLEACH藍染惣右介を下地にしており、その目的・大義は類似している。

 

 ここでこの結論①と、前項の根拠①で述べた藍染の目的を照らし合わせ、逆算的に偽夏油の目的を考えてみましょう。

 藍染は既存の世界を世界たらしめている根幹である霊王を殺害しようとしました。それこそが世界のあり方を変える手段だったからですね。

 彼が取った様々な手段や実験の数々が、霊王の殺害という目的に繋がっていることを踏まえると、そのキャラクターを下地にした偽夏油も同様なのではないでしょうか。

 この、作品間のキャラクターの類似性というメタな視点を以て、逆説的に偽夏油の最終目的を導いてみようと思います。

 

 仮説①:偽夏油は天元様の殺害、ないし天元ありきの現呪術界そのものを変えようとしている。

 

 あくまでのこの仮説が正しいという前提に立って、ここから先の考察、ないし大仮説の考察を進めていきたいと思います。

 

2.「霊王」と「天元様」の役割の相似

 そもそもなぜ天元を殺す必要があるのかですが、ここで前項の仮説①を進める上で、BLEACHにおける「霊王」と呪術廻戦の「天元様」の果たす役割を深掘りしていきます。

 

 根拠②:「霊王」も「天元」も、世界を安定させるための「装置」である。

 

 BLEACHの世界における「霊王」は、表向きは尸魂界(やその他の世界)を束ねる王とされていますが、その実は世界を安定させるための「楔」でした。

 

 霊王存在以前の「世界」は生と死の境界が曖昧で、魂の循環というものが存在していませんでした。これを安定させ、魂の循環・生と死の概念を定着させるための装置として機能しているのが霊王という存在です。霊王が生まれ、世界の中心として機能することで世界は輪郭を手にしたわけです。作中ラスボスのユーハバッハは霊王を殺すことで「死が存在しない世界」を作ろうとしていましたね。この点に関して詳しく知りたい方は小説Can't Fear Your Own Worldを読んでください。

 

 では一方の天元です。これはまだ作中でほとんど語られていないため多くが謎ですが、一応作中でわずかですが言及されています。

 単行本8巻第66話にて当時高校生の夏油が「高専各校、呪術界の拠点となる結界、多くの補助監督の結界術。それら全てが天元様によって強度を底上げしている。あの方の力添えがないと防護や任務の消化すらままならない」と述べています。ここでは彼の発言がミスリードでないという前提に乗りますが、天元様というのは現呪術界にとってなくてはならない存在ということです。

 

 加えて天元は「不死の術式を持っている」ということが明らかになっています。不死の術式ってなんだよって感じですが、外部からの干渉を受け付けないとか、時間回帰や空間回帰系の能力で肉体の形を常に一定に留めておけるとかなのかなと。ただ不老ではないと明言されているので、どちらかといえば肉体の状態を常に「フラット」に留めおく術式なのかなと考えています。

 

 ここで大事なのは、霊王も天元も、代替わりするような存在ではなく、一個体で完結するものであり、そのどちらもが今の世界を安定させるための装置としての役割を担っているという点です。

 

 唯一の違いは、天元は不老ではないため一定以上の老化を終えると術式が肉体を創り変えようとするため、「星漿体」と呼ばれる適合者の肉体を生贄に肉体の情報をリセットする必要があるようです。

 この時点で既に人外の気配がしますが、天元の術式が仮に「不死」そのものであるなら、このような「創り変え」は起こり得ないのではないでしょうか。従って天元の術式は「不死」そのものではなく、別の術式の副次効果として不死が付与されていると考えた方がいいかもしれません。

 また、「肉体の情報をリセットする」というのも妙な話です。というのもこの世界における「術式」というのは突然降って湧いたようなものではなく、あくまで生得的に肉体に刻まれるものだからです(単行本2巻第12話参照)。

 この設定が正しいとするなら、星漿体の肉体を取り込んで肉体の情報を書き換えた時点で元来の肉体に刻まれた術式というのは消えるはずです。現に偽夏油は「呪霊操術(とこの状況が)欲しくてね」と夏油の肉体を乗っ取った理由を述べています。

 

 この「術式は肉体に宿る」というのが不変の事実であるなら、天元というのは異質な存在であり、「事実に反した存在」ということになります。このことからも、天元というのは一人の人間というよりも、それとはやや異なる装置的な存在だと考えられます。

 ただ、作中で夜蛾学長が「天元様に会ってくる」と述べていることから、概念的な存在や呪物のような無機物ではないのでしょう。

 いずれにせよ、その特性や異質性、役割的側面からも、天元はBLACHにおける霊王とかなり近しいと思われます。

 何故なら霊王同様、天元を殺せば現代呪術界は文字通りひっくり返るわけですし、諸結界や制御・底上げされていた呪力の流れが混沌と化すわけですから。

 

 結論②:天元は霊王同様、世界を安定させるための装置であり、術式を持つという特性上人間かそれに類する存在である。

 

3.「四大貴族」の咎、「御三家」の謎

 ではそれらの類似性から、別の仮説を導いてみようと思います。それは、両者の成り立ちにおける世界の「闇」の側面です。

 

 仮説②:「御三家」は「四大貴族」と対応する一族である。

 

 BLACHにおける四大(五大)貴族は、言わば始祖としての一面がありました。

 彼らはとある「男」を贄とし、世界に永劫縛り付ける形で「霊王」を生み出しました。手足を捥ぎ、内臓を抉り出して結晶の中に封じ、それを大衆には伏せて「王」として祀り上げる。それこそが尸魂界の罪であり、多くの者が知らない世界の闇です。

 四大(五大)貴族はその罪を一身に背負う一族であり、現在の世界を形作る大きな菊花を生み出した者達です。

 

 では呪術廻戦における御三家はどうでしょうか。

 御三家の歴史や成り立ちに関してはまだ謎なところが多いですが、個人的には彼らが「御三家」と呼ばれているのはそれなりの理由があると思っています。

 というのも「御三家」という言葉の意味には、有力・有名・人気な三者という意味があります。何もないところからこうした評価は生まれませんし、歴史上何かしらの役割を果たしたり、大きな流れを作り出したりした者がこの評価の対象となります。

 例えば呪術を体系化したとか、呪霊を狩る組織を初めて作ったとか、あるいは今の世界を形作ったとか、そういう「歴史における大きな流れの原点」としての位置付けが「御三家」なのではと思います。多くの呪物や呪具を抱えていたり、"相伝"と呼ばれるめちゃくちゃに強く汎用性が高い術式を持っていたりしますから、そういった面で「四大貴族」と対応していると言えるかもしれません。

 

 ただ、呪術廻戦には歴史上の人物や神話上の生き物も登場しています。菅原道真が日本三大怨霊と呼ばれていたり、宿儺が「ヤマタノオロチ」の名を口にしています。つまり少なくとも日本における呪術の歴史はかなり古いということです。

 御三家がいつから御三家と呼ばれているのかが定かではないためこの点はかなり曖昧ですが、仮に御三家が現代呪術界の礎を築いた一族であるなら、それと天元は無関係ではないのではないでしょうか。

 

 何せ天元の果たす役割として、「各拠点の結界や、補助監督の結界術の底上げ」があるくらいですから、天元というのが「気づいたら世界に存在していた守り神的存在」というよりも「現代の世界を安定させるために歴史上のどこかのタイミングで人為的に生み出されたもの」と解釈する方がよほどスッキリするのです。そう解釈しなければ天元というのはあまりに「現代社会に都合が良すぎる存在」だからです。まるで「そうあるようデザインされた」かのように。

 これが御三家によって作られた存在であるなら、合点がいきます。彼らが「御三家」と呼ばれる理由も実績も「天元創出」があるなら十分ですし、天元によって現在の世界が平定されたのなら天元がいない世界というのは、文字通り(偽夏油が目指す)「混沌の世界」となるわけですから。

 

 これがどのタイミングでの出来事なのかは、正直過去の時間軸の情報があまりにも少ないので妄想の域を出ませんが、呪術全盛と呼ばれた平安時代には、既に礎としての天元はいたのではないでしょうか。夏油が「500年に一度、星漿体と同化する必要がある」と半ば確信したように言っていたことからも、既に天元は一度か二度、肉体の情報を書き換えている可能性が高いわけですから。

 

4.結論

 ここまでの仮説、並びにそこから導いた結論をまとめていきます。

 藍染と偽夏油のこれまでの行動から、両者の間には類似が見られる。

  ①'両者ともに世界のあり方を変えようとしており、そのために既存の枠組みに囚われない種々の存在を人為的に作り出していた。

  ①"藍染は霊王を殺すことで世界を変えようと画策していた。

 ②霊王と天元は、その双方が現在の世界の礎としての側面があり、世界を安定させる装置である。

  ②'天元はその術式の特殊性から、生きた人間というよりも装置的な存在である。

  ②"天元の恩恵は、自然発生的なものではなく、人為性が感じられる。

 ③御三家は四大(五大)貴族と対応している。

  ③'四大貴族は霊王を「楔」にする罪を犯し、その結果現在の世界が作られた。

 

 総論:天元は御三家によって人為的に生み出された存在であり、その正体は公益の贄とされた人間である。

 

 天元の不死の術式というのが、実は「結界術の底上げ、呪力の流れを制御する支柱的役割」を課す代償として背負わされたものだったとかだったらより一層面白いですね。最悪の「縛り」ですから。

 あるいは獄門疆のように、特定の術式を持った人間が何らかの形で呪物になった、とかもありそうです。呪物化の過程で御三家が関わっていた、とか。

 

 途中から若干こじつけや妄想が強くなりましたが、今回の考察はこれで終わりとします。

 考察というのは考える過程を楽しむものなので、的中してもしなくてもみんなでわいわい楽しんでいきましょう。

 

 多分今後も不定期でこんな感じの考察記事を書いていきます。もはやディベートブログではなくディベーターが書くただのブログと化していますね。それはそれでありでしょう。

 

 それではまた。

 よしなに。