けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【考察】「八洲龍下安全保障協定」と《東仙境》とは一体何なのか【天傍台閣】

Hatena

 ども、けろです。

 先週8/16(金)からジャンプ+で連載が始まったとある作品があまりにもガン刺さりしてどうしようもないことになっております。

 

 『天傍台閣』という祕術バトル漫画なのですが、一言で表すなら大人のお仕事妖術バトル漫画といったところでしょうか。

 架空の日本を舞台に、「禍獣」と呼ばれる害獣や祕術関連の犯罪から市民を守る組織に所属する主人公・龍守藤哉の姿を描く今作、まだ2話ですがすでに大作の気配が漂っています(早すぎる断言)。

 

 

 というのも今作の作者は2年ほど前にジャンプ+で『國我政宗の呪難』というヤベー読切を描いた弓庭史路先生という方なのですが、この読切の世界観の作り込みがマジでとんでもなく、当時の自分は「おい集英社!!!今すぐこれを連載しろ!!さもなくば集英社トラックだぞ!!!」と毎日叫んでいました。2年待ちました。

 

 

 今回はそんなジャンプ+期待の新鋭・弓庭史路先生が送る新連載『天傍台閣』の作中で登場したある単語について、どう考えても早すぎる考察をやっていこうと思います。

 

 というわけでやっていきましょう、天傍台閣考察回です。 

 (作品の魅力に関する解説記事はそのうち書きますが、本記事は第1話を読んでいることを前提にぶっ飛ばしていくので、未読の方はぜひ上記リンクから第1話をお読みください)

 

 

1.「八洲龍下安全保障協定」とは

 第1話、「禍獣」と呼ばれる害獣発生に伴い地元警察により封鎖された現場に立ち入った今作の主人公・龍守藤哉が口にした「八洲龍下安全保障協定」という単語。

 まずはこの「協定」の定義と、それが果たしている役割について考察していこうと思います。

 

1-1.「安全保障協定」の定義

 主人公たち「祠部省」の人間はこの「協定」に基づき、民間人の立ち入りが制限されている区域に立ち入ることができるほか、禍獣に対する祓除任務を受け持つことができるように見られます。

 

 「協定」内に用いられている「龍下」という単語は、作中で術者の郷国とされる《龍下まれびと特別行政区》のことを指していると考えられるため、前半部分の「八洲」が物語の舞台となっている架空の日本の国名である「八洲国」とすると、この協定は「八洲国-龍下特別行政区間で取り交わされた、安全保障にまつわる協定」と推測することができそうです。

 書かれている単語をそのまま読み下しただけですが、さらっと読み流しがちな描写こそ改めて声に出して読むとその意味するところが飲み込めたりします。

 

1-2.安全保障協定の対象範囲

 では上記の「安全保障」とは一体「何」に対して適用される言葉なのでしょうか。

 現時点では完全に考察の域を出ませんが、僕はこの協定を『八洲国全土に対して一定の安全(社会秩序とも換言できる)を齎すことを引き換えに、術者達の独立行政区の樹立と不可侵を約束させるために締結された協定』と推察しており、従って本協定における「安全保障」とは、祕術関連のあらゆる事象・事件に対する《東仙境》の関与を認めるものだと考えています。

 

根拠①:祠部省のCM放送範囲

 第1話の冒頭、「怪奇現象、祕術犯罪、霊感商法など〜不安や悩みごとは祠部省の各種相談窓口〜」というCMが街の街頭モニターに映し出されていましたが、この街の名前は「司州 都城府」であり、5ページ目で登場した地図上では《特別行政区》からやや距離があります。

 

引用:弓庭史路『天傍台閣』集英社, 第1話, p4-5


 また主人公・龍守藤哉が禍獣祓除に派遣されたのは「畿州 丹呉郡」と都城府・特別行政区のいずれからも非常に距離のある街であり、彼らの所属する支部もまた「播磨」に位置していることが作中の描写からわかっています(暇な人は地図上で地名を探してみてください)。

 

 これらの描写から総合的に考えると、《特別行政区》に本部を構えていると思われる祠部省、並びに《特別行政区》が持つ実権の範囲は八洲国全土に及んでいる思われ、その実情も「犯罪捜査」「害獣駆除」といった、現実世界であれば警察という組織が対応するような事件まで対応しているため、極めて広い範囲に対して非常に強い影響力を有していることが推察できます。

 

根拠②:禍獣に対する対抗力

 第1話中盤、丹呉郡にて発生した禍獣祓除に派遣された龍守達の戦闘において、通常弾の効果が薄い描写がありました。

 

引用:弓庭史路『天傍台閣』集英社, 第1話, p31


 また龍守の口からは「徹甲弾 榴弾 曲射弾」といった高威力武器の存在も仄めかされていて、地元警察は彼らの到着まで現場封鎖以外には禍獣に対する特段の対処を行なっていなかったことから、この世界において禍獣に対して有効な戦力・武力を保持し、かつそれを公的な空間で行使できる権限を有しているのは祠部省(≒特別行政区)の人間だけであると考えることができます。

 

引用:弓庭史路『天傍台閣』集英社, 第1話, p26

 

 

 害獣に対して警察以上の戦力・武力を有しているとなると、祠部省という組織はちょうど現実世界でいうところの「自衛隊」に相当する、と言えるかもしれません。

 

 以上のことから、八洲国において禍獣に有効な戦力を提供し、その他の祕術関連の犯罪に対する対抗策として祠部省(≒特別行政区)は機能していることが読み取れるため、上記《八洲龍下安全保障協定》はこれらの権力の行使を国家として認めるものだったのではないか、と考えられます。

 

2.《東仙境》の役割


 《龍下まれびと特別行政区》の別名である《東仙境》ですが、そもそもこの行政区は「何のため」に生まれたのでしょうか。

 なぜなら「祕術関連の犯罪・事件への組織的実効力の確立」「術者達の行政区の設立」は根本からしてレイヤーの異なるものだからです。行政区など設立せずとも術者達が国の中枢に(祕術という観点から)取り入ることは充分に可能でしょうし、何かしらの強い目的がないとわざわざ行政区の設立という急進的な要求には至らないはずです。

 

 上記の「安全保障協定」に関する考察では、その目的を『八洲国全土に対して一定の安全(社会秩序とも換言できる)を齎すことを引き換えに、術者達の独立行政区の樹立と不可侵を約束させるために締結された協定』と推察しましたが、仮にこれを正とした場合、一体なぜそのような取り決めをしたのか。

 換言するなら、分離独立を求めて蜂起した彼らは一体「何」を目的として独立行政区の設立を求めたのでしょうか(条約・協定の類には必ず「目的」があるからです)。

 

 そして僕は、《東仙境》という行政区は、術者の保全、並びに社会的地位の保護を目的として設立されたものであると推察しています。

 

2-1.「不染派」という勢力

 東仙境設立は、「不染派」と呼ばれる分離独立派の術者達による示威運動に端を発することが作中で明かされていますが、そもそも分離独立派を指す「不染」という言葉は読み下すと「染まらぬ(者)」となり、分離独立を支持する者達が自分たちを「大衆(≒非術者達)社会には迎合せず、染まることはない」と定義し、祕術を使役する自分達という存在に対して一定の尊厳を抱いていることが感じ取れます。

 そもそも術者達が思想的に一枚岩となっているのであれば、わざわざ「不染派」という名称をつける必要もないでしょうし、術者の間で複数の派閥(分離独立派、穏健派等々)があり、分離独立運動もそこから生まれた運動だと思われます。

 

2-2.天傍台閣設立当時の社会背景

 ここからは考察というよりも妄想の域に近くなりますが、この背景にあると考えられるのは、術者達がその実力や八洲国において果たしてきた役割に対する不相応な扱いなのではないでしょうか。

 少なくとも作中では術者の人口増加に伴い「祕術界では術者の社会的地位を見直す機運が高まる」との記述があることから、「見直されるに相当する社会的地位だった」と意言い換えることはできると思います。

 

 《東仙境》設立の時代背景に関する詳細な考察は後日記事にする予定ですが、これらのことから、術者の分離独立と社会的地位の向上のために蜂起した彼らが八洲国に対して求めたものは「術者が迫害されることなく安全に暮らせる土地と社会制度の確立」と推察することができ、「八洲龍下安全保障協定」はそのために締結された協定であると考えることができそうです。

 

 禍獣や祕術関連の犯罪に対抗できるのは現時点での描写を見る限りでは術者だけであり、当時の術者達が冷遇されていたと思われる社会情勢を踏まえると、本協定は「術者の特別行政区設立を認め、以後不可侵とする代わりに、祕術関連の犯罪・事件に対する技術・人員の供与を行うこと」を取り決めたものなのではないでしょうか。

 

 八洲国にとっては術者という人材の提供を"インフラ"のような形で受けることができ、術者達にとっても念願となる特別行政区を手にすることができますから、win-winの協定と言えそうです(それでも交渉に12週という時間を要したのは、特別行政区設立にあたり当該地域に住んでいる住民達の立ち退きが必要であることや、新たな組織体制の設計等のすり合わせが必要だったからでしょうか)。

 

3.結論

 長くなってきたのでここらで結論をまとめます。

 「八洲龍下安全保障協定」の役割、そしてその結果設立された《東仙境》の役割は、以下の2点であると考察できます。

 

 ①八洲国全土における祕術関連の犯罪・事件に対する組織的対抗策の確立と八洲国に対する技術供与(国家の中枢に術者を置くことによる牽制と置き換えることもできる)。

 ②術者達の物理的・心理的安全を確保する、行政区としての独立性の担保。

 

 現時点で確定している情報や描写をつなぎ合わせるとそこそこ現実的な路線ではないかと思っているのですが、さてさてこれらの考察は当たっているのか、それとも大外れなのか。

 そして何より、『天傍台閣』という作品はどのような展開を迎えるのか。ぜひ一緒に盛り上がっていきましょう。僕は絶対単行本を買います。

 

 

 それではまた。

 

 よしなに