けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【考察】「葉隠透=内通者」の伏線を洗い出す【僕のヒーローアカデミア】

Hatena

 ども、けろです。

 ヒロアカ第335話『有精卵』にて遂に明らかになった「内通者」の正体。それはA組の級友、葉隠透でした。

 僕はこの衝撃がデカすぎて週明けからグロッキーだったんですが皆さんはどうでしょうか。

 

kero-entame-channel.hatenablog.com

 

 「内通者」の存在自体は、第83話『敗け』にて林間合宿先に敵連合が現れたことについてプレゼントマイクが以下のように言及しています。

 

「信頼云々ってことでこの際言わせてもらうがよ…今回で決定的になったぜ。

 

 いるだろ、内通者。

 合宿先は教師陣とプッシーキャッツしか知らなかった!怪しいのはこれだけじゃねぇ。ケータイの位置情報なり使えば生徒にだってーーー」

 

 彼の主張は「この場にいる誰も自分自身が100%シロだと言い切れない状況での内通者探しは内部崩壊を招く」というスナイプ先生からの反論を受け退けられましたが、読者にはこの「内通者」というワードが与えられ、それまでうっすらと抱いていた疑惑が確信に変わった瞬間でもありました。

 そこから5年、ようやく回収された内通者の伏線。

 

 というわけで今回はそんな「葉隠透=内通者」について、明かされた今だからこそ過去の描写・怪しい点を振り返っていこうと思います。

 

 それではやっていきましょう。

(2021/12/6追記:更なるどんでん返しで内通者=青山優雅ということが明かされました。本記事での「葉隠透=内通者」というのはハズレてしまいましたが、ミスリードの伏線という意味で楽しんでもらえると幸いです)

 

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1.雄英バリアー突破事件&USJ襲撃事件

1-1.雄英バリアーを破壊する目的

 

 ヒロアカのストーリー序盤の山場の一つが、主人公である緑谷出久達が通う雄英高校ヒーロー科の授業の一環として行われた救助訓練中に敵が襲撃した『USJ襲撃事件』です。

 これは死柄木弔率いる敵連合がオールマイトを殺すための奇襲だったわけですが、これは『その日その場所にオールマイトがいる』という確たる事前情報を元に行われたものでした。その証拠に敵連合の一人、黒霧は襲撃時以下のように述べています。

 

「13号に…イレイザーヘッドですか…先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが…」

 

 そしてそのつい先日、別の事件が起こっています。

 それはオールマイトが雄英高校の教師になるという情報を聞きつけて集まってきたマスコミ達が強固なガードで守られた雄英高校内に侵入してくるというもので、ここでは『雄英バリアー突破事件』と呼称します。

 黒霧の「先日頂いたカリキュラム」という発言と、この雄英バリアー突破事件を繋げると、「彼らは雄英バリアー突破事件を引き起こし、カリキュラムを強奪した」という可能性が強くなります。

 

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*1

 

 また上記のコマを見ればわかりますが、雄英バリアーは破壊されたというよりも『何かの力によって崩壊している』と考えられます。細かい瓦礫が下に落ちているので。

 これはまぁ死柄木弔の個性と考えて間違いありません。

 

 つまり情報を整理すると、「死柄木弔ら敵連合は、オールマイト殺害の計画を立案するため、彼がUSJで半隔離状態になるタイミングを知りたかった」わけであり、「事前に計画を立てるために必要な高校側のカリキュラムを奪取するために雄英バリアー突破事件を引き起こした」となります。これが彼らの「目的」ですね。

 

1-2.教師であれば混乱を引き起こす必要がなかった

 

 ですが、それは同時に「内通者が教師である可能性」が低いことも示しています(ここでは内通者が複数人ではないことを前提にしています)。

 

 何故なら、『内通者がカリキュラムに自由に触れる立場の人間だった場合、雄英バリアー突破事件のような外的要因による騒動を引き起こす必要がない』からです。

 敵連合は確かに雄英バリアー突破事件を引き起こしました。それは高校側が管理する授業カリキュラムを盗み出すためです。

 ですが、仮に教師が内通者であった場合、わざわざ外からの襲撃という混乱状態を作り出す必要はありません。自分が作ったものであればそのまま持ち出せるし、他の教師が作ったものであってもいくらでも口実をつけてデータを盗み出すことは可能です。そうして持ち出したデータを、後で敵連合に接触して渡す。そうすることで敵連合は容易にカリキュラムを手に入れることができたし、教師が内通者であればそうしたはずです。

 

 でもそうしたことはなく、実際に突破事件は起きた。

 この状況を、「内通者は生徒であり、緊急警報が鳴った混乱に乗じて職員室に忍び込みデータを盗み出す必要があった」と仮定すれば辻褄が合います。特に警報が鳴った直後はデク達のいる食堂も混乱状態で、飯田は「先生方は!?対処に追われているのか!?」と述べています。つまり教師陣はバリアーを突破してきたマスコミへの対処や、警報の発生原因の特定等の作業に追われており、職員室はもぬけの殻だった可能性があるわけですね。

 

 そしてその際に最も隠密行動に向いているのが葉隠透です。

 彼女の個性は「透明化」であり、服を脱いでいる状況下であれば誰も彼女を視認できません。仮に職員室に忍び込んでいたとしても、他の生徒よりバレる可能性はずっと低いわけです。

 この辺の答え合わせは作中で語られるでしょうから楽しみですね。 

 

2.林間合宿襲撃編

2-1.何故敵連合は合宿先を知っていたのか

 

 次の大きな事件は、デク達が訪れた林間合宿先にまたもや敵連合が襲撃し、かっちゃんを攫っていった『林間合宿襲撃事件』です。

 これは公には秘匿に行われた行事で、行き先は(前述のプレゼントマイクの言う通り)教師陣とプッシーキャッツ達しか知り得ません。

 あくまで「内通者は一人」という前提に基づいた仮説ですが、生徒が内通者の場合、発信器の類があれば位置情報を伝えることは容易です。

 この時点ではまだ内通者が教師なのか生徒なのかを絞り込むことは難しいですし、まして葉隠という個人まで特定することはできません。

 

2-2.ガスによる気絶で「除籍」を免れた

 

 ですが、この襲撃事件の顛末を見ると、内通者は葉隠だったのでは?という可能性が浮上してきます。

 それは襲撃事件が決着し、直後のオールマイトvsAFOの一戦が幕を閉じたのち、雄英が全寮制に移行した時のイレイザーヘッドの台詞です。

 

「オールマイトの引退がなけりゃ俺は、爆豪・耳郎・葉隠以外全員除籍処分にしてる」

 

 これは誘拐された爆豪を奪還しようとデク達が独断で危険行動を取り、その上それを知っていたクラスメイトがデク達を止めなかったことに起因した発言です。

 この中で爆豪は攫われていた張本人なので無関係です。

 では耳郎と葉隠はどうでしょう。彼女達は襲撃してきた敵の一人の毒ガスの個性によって気絶しており、デク達が爆豪奪還計画を立てていることを知りませんでした。

 

 逆に考えれば、「彼女達は行動不能状態であったが故に除籍処分を免れることができた」わけです。もちろん除籍処分はイレイザーヘッドの判断によるものですし、それ自体もオールマイトの引退によって取り下げられました。

 ですが、葉隠=内通者という事実が明らかになった今振り返ってみれば、彼女はデクや飯田、轟達が除籍された後の雄英に残留することができた数少ない生徒の一人になれていた可能性があるわけです。

 そして示し合わせたように、葉隠は教師による家庭訪問が描かれていません。同じくガスによる被害を受けていた耳郎は両親と家庭事情がしっかり描かれていたのに、です。

 

3.仮免試験で見せた「集光屈折」という技の違和感

 

 加えて葉隠は、その「個性」も謎に包まれています。

 登場した当初、彼女の個性は「透明化」だと言われていました。

 ですが仮免試験では下記のような「光の屈折を変化させた技」を使用しています。

 

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*2

 

 この技、現象通りに解釈するのであれば「光の屈折率を変化させる技」なのですが、だとすると彼女の個性は「透明化」という直接的なものではなく、「光の屈折率を変化させる個性」ということになります。

 ですが仮に個性が「光の屈折率変化」だとすると、今度は彼女自身の透明化にも疑問が浮かびます。

 それは「葉隠が身につけている衣服は透明になっていない」という点です。

 彼女の能力自体が単純に光の屈折率を操るものであれば、身につけた衣服も同様に透明にできるはずです。ですが作中では彼女が身につけた衣服はもれなく宙に浮かんでいます。

 

 どちらにしても矛盾が生まれてしまうこの状況ですが、一つだけ解があります。

 それは「葉隠自身が個性を偽るためにあえて身体のみを透明にしている」です。ヒロアカの世界での「個性」は実に多様で、同じ結果を齎していたとしてもそれが全く別質の個性によるもの、というのは十分に考えられます(「体内の水を放出する個性」と「大気中の水を掌に集めて放出する個性」では、同じ「水を出す」という結果を齎しますが個性は別物です)。

 

 だとすると彼女の個性には何かしらのギミックがありそうですし、作者も単行本のおまけページで「彼女の"個性"も早く紹介したいのですが」と言及しているので、これも何か説明がありそうですね。

 

4.「葉隠透」という名前に込められた意味

4-1.「木を隠すなら森の中」

 

 さて、最後の彼女の名前について触れていきます。

 ヒロアカの世界での「名前」は高確率でその「個性」が連想されることが多く、彼女の名前も「透明化」という能力と合わせて考えればすんなり理解できます。

 

 ですが、彼女が内通者であるとした場合、別の意味が浮かび上がってきます。

 それは「木(木の葉)を隠すなら森の中」という慣用句です。

 これは「モノを隠すなら同じ性質の中に紛れ込ませた方がいい」という意味の言葉ですが、葉隠が内通者であると分かった今、「高校にスパイを送り込むなら同じ年齢の子供」という意味に換言できます。加えて名前の「透」と合わせて考えるなら、「一度侵入したが最後、透き通って見えなくなる」と解釈できるでしょうか。

 

4-2.浮かび上がる「スパイ」の文字列

 

 これは若干こじつけが強い気もしますが、SNSで見かけて「なるほど〜」となったのでおまけとして紹介します。

 彼女の名前の漢字をそれぞれ読み換えると

 

 透(ス)

 葉(パ)

 隠(イ)

 

 となります。音読みと訓読みが混ざっているのが気になりますが、こうした考え方も個人的にはめちゃくちゃ好きです。堀越先生はA組の生徒の名前に関してはかなりきっちり考えていそうなので、彼女の名前にこうした意味が込められていると考えることは容易にできますね。

 

 

 はい、いかがでしょうか。

 葉隠透が内通者だと分かった今、過去の描写を読み返してみるとポツポツと伏線らしきものは散りばめられていたんじゃないでしょうか。

 ここから先のストーリーでは彼女がなぜ内通者として暗躍していたのかが描かれそうですし、ますます地獄が加速しそうです。

 

 

 というわけで今回はこの辺で。

 

 よしなに。

*1:引用:堀越耕平『僕のヒーローアカデミア』集英社,第2巻,p105

*2:引用:堀越耕平『僕のヒーローアカデミア』集英社,第12巻,p182