けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【考察】死滅回游の『結界』に選ばれた土地は文化的・呪術的パワースポットである【呪術廻戦】

Hatena

 ども、けろです。

 本編では遂に幕を開けた死滅回游、これからの展開が本当に楽しみで仕方ありません。

 

 さて、そんな死滅回游をより楽しめる記事をと思い、とある考察を持ってきました。

 

 皆さんはこのコマを覚えていますでしょうか。

 

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*1

 

 これは第146話で天元の元を訪れた虎杖達に対し、天元が死滅回游の説明をする際に用いた図で、地図上の二重丸(◎)の位置はそれぞれの結界(コロニー)の所在地を表しています。

 

 そんな「結界」に関して、今週号のジャンプ43号掲載の第160話にてある可能性が浮上しました。

 それは羂索が発した「(仙台の)結界の中心は刑場跡」という台詞と、後に登場したキャラクターが口にした「(現在位置は)勾当台と広瀬通りの間くらい」という台詞。

 これらの台詞から、宮城県仙台市仙台駅前にある「広瀬通り」と、その近くにある「勾当台公園」、そしてその近くにある「仙台藩刑場跡」という土地がそれぞれ浮かび上がってきます。

 

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(画像では見切れてしまっていますがこの下に広瀬通りという地名があります)

 

 この「仙台藩刑場跡」というのは、江戸時代に罪人の処刑場として使用された場所のことで、ここでは7000人以上の罪人が処刑されたようです。

 

www.city.sendai.jp

 

 さて、これらの描写から一つの仮説を提示し、考察を始めていきましょう。

 

 仮説:死滅回游の「結界」に選ばれた土地は、呪術的に要となる土地である。

 

 この仮説をもとに、下記の順序で検証していきましょう。なお前述の仙台藩刑場跡は既に検証しているので含めないこととし、最後にそれぞれの位置関係を俯瞰したマップで見ていきます。

 

1.東京の2つのコロニー

 

 まず、他の土地と異なり東京には二つの「結界」が、程近い位置に存在します。下記のコマの下方に羽田空港が映っていることを参考に、それぞれの位置を探っていきます。

 

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*2

 

1-1.豊洲水神社

 

 まずは右側の結界、これは海上を埋め立てた土地の上に作られていることから、位置的に豊洲市場だということが分かります。

 そして豊洲市場には「豊洲水神社」という、大漁・繁盛を祈願して建立された神社があります。

 

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 この「水神社」の面白い点は、これが「築地から移転された魚河岸神社である」という点です。豊洲市場はご存知の通り築地市場から移転する形で作られたわけですが、この神社も元々は築地にありました。

 そして、その魚河岸神社の本殿(=神の宿っている場所)は「神田明神」です。言わばこの水神社の大元はこの神田明神にある、ということです。

 

tesshow.jp

 

 そしてこれまた面白いのは、神田明神に祀られている神様です。

 神田明神には三体の御祭神が祀られていますが、その名はそれぞれ「大己貴命(おおなむちのみこと)」、「少彦名命("すくな"ひこなのみこと)」「平将門命(たいらのまさかどのみこと)」です。

 さて、羂索が主導する死滅回游の結界の候補地が、「すくな」の名を冠した神と、三大怨霊の一人とされる平将門にまつわる土地というのは偶然と考えていいのでしょうか。

 

www.kandamyoujin.or.jp

 

1-2.伝馬町牢屋敷跡

 

 その豊洲から少し北に上ったところ、皇居の近くに「伝馬町牢屋敷跡」があります。

 

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 これも実在した施設で、江戸時代に囚人を収監するために用いられました。

 しかもその実態は割と酷く、牢内の囚人が増えてくると生活に支障をきたすようになるため殺人等で人数を減らしていたりしたそうです。加えて栄養状態も衛生状態も悪かったため、病気になる者もいたようです。

 

ja.wikipedia.org

 

 ただでさえ罪人の収容所というだけで人々からの負の感情が向けられやすい上に、そこに収監されている人間もまた環境的に負の感情を抱きやすい場所だったというのは、ここが呪術的にも呪霊が生まれやすい土地柄だと考えてもいいかもしれません。

 

2.青森・恐山

 

 ここからは地図を北から順に下っていきます。

 まずは最北、青森。地図的にはむつ市の辺りですね。

 

 ここには日本三大霊場の一つ、恐山があります。

 正確には湖畔にある「恐山菩提寺」が日本三大霊場とされていますが、この恐山もまた信仰の対象でした。

 それはここが死者の供養の場とされていたことに起因するようです。

 

 呪術的に考えるのであれば、恐山は「人々の「死」にまつわる集合的な意識が向かう土地の一つであり、思念が集まりやすい霊場である」といえます。

 

ja.wikipedia.org

osorezan.or.jp

 

3.岩手・小鷹刑場跡

 

 次に岩手県。ここには小鷹刑場跡という処刑場の跡地があります。

 

    歴史の壺 第5回『刑罪大秘録』

 

 ここもまたかつて罪人の処刑が執行されていた場所であり、市中引き回しの末磔にして処刑される、なんてこともあったようです。おっそろし。

 

4.愛知・赤坂刑場跡

 

 サクサクいきます。次は愛知、赤坂刑場跡。

 

www.net-plaza.org

scary.jp

 

 なかなかネットで仕入れられる情報が少ないんですが、ここも江戸時代に作られ、明治政府によって廃止されるまでの間に数百人の罪人の処刑が行われた場所です。怨霊の一つや二つ湧き出てもおかしくないですし、市民の負の感情が集まると考えても不思議ではないですね。

 

5.京都(滋賀)・比叡山or伏見刑場跡

 

 京都に関してはいくつかの候補が考えられます。

 一つはこれまでの流れの通り処刑場である伏見刑場跡

 

kyotofukoh.jp

 

 キリシタンの斬首が行われたりと、今でこそ目立たない外観ですが霊感のある人にとっては「ヤバい土地」のようです。

 もう一つの候補は、前述の青森の恐山同様、日本三大霊場の一つ、比叡山・延暦寺です。

 延暦寺は天台宗の総本山・平安仏教の中心として知られ、人々の信仰の対象と考えることができます。多くの人の崇拝・信仰の共通認識として「比叡山・延暦寺」というのが存在している、ということですね。

 

6.大阪・千日刑場跡

 

 次は京都から少し西に向かい、大阪。ここには千日刑場跡があります。

 

ja.wikipedia.org

 

scary.jp

 

 処刑場が人々の負の感情の温床となる、というのはこれまで述べてきたので割愛していきます。

 

7.広島・樽ヶ鼻刑場跡

 

 作中のコマ上で中国・四国地方における結界の位置が一箇所に限定されているのは謎ですが、位置的にここは広島と考えていいでしょう。

 

 広島には樽ヶ鼻刑場という処刑場が存在していました。あとはお察しです。


www2.hp-ez.com

 

 あるいは、少し時間軸を現代に寄せるのであれば「原爆ドーム」あたりも負の感情の集積地として機能すると考えることもできそうです。

 ただ、歴史的背景やこれまでの流れを踏まえると、ここだけが突然数百年分の月日をすっ飛ばしているとは考えにくいので、ここでは便宜上樽ヶ鼻刑場跡を候補として挙げておきます。

 

8.鹿児島・涙橋血戦の碑

 

 最後は最南、鹿児島。

 絞り込むのが難しかったですが、一応の候補として「涙橋血戦の碑」を挙げておきます。

 この「涙橋」というのは、かつてこの橋の先にある処刑場に向かう際、罪人とその家族が最後の別れをしたことに由来する地名で、碑自体は明治の戦争で戦没した兵士を弔うために建てられたものです。

 そのため、この碑自体が呪術的な対象というよりも、この碑が建てられている土地そのものが、かつて罪人とその家族が涙と血を流した場所であり呪術的に負の感情が溜りやすいと考えた方が良さそうですね。

 

meiji-ishin.com

 

 

9.作中コマと地図の比較

 

 さて、最後になりますがこれまで説明した霊場・刑場跡等のスポットと、呪術廻戦の作中で描かれた10の結界の位置を、実際に並べて比較してみましょう。

 

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 どうでしょうか。僅かなズレ等はありますが、ほぼ左のコマと合致します。

 

 この合致から言えることは、「死滅回游の結界として選定された土地は、単なる偶然ではなく意図して選ばれた」ということであり、霊場、あるいは刑場跡という、文化的にも呪術的にも人々の思念や怨念が集まりやすい場所を狙って作られた、ということになります。

 

 

 羂索がなぜこのような土地を結界の対象として選んだのかは現時点では明かされていません。

 ただ、半径5,6キロに及ぶ巨大な結界を全国に10個、しかもそれぞれがかなり強力な条件設定で作られているということを踏まえると、これは「結界をブースト・安定させるための補助として、土地に集まっている思念や流用した」と考えることができそうです。

 

 これらの設定が明らかになるのか否か、そもそも僕があげたこれらの土地が全然的外れで、実はもっと別の理由があって選ばれているのかどうか、かなり気になるところですが作中で語られるのを祈りましょう。

 

 

 久しぶりに広範なリサーチをすると疲れますね。しかも個人のブログ等ばかりがヒットして、きちんとした一次史料になかなか巡り会えなかったのも惜しいところです。

 

 

 というわけで今回はこの辺で。

 

 それではまた。

 

 よしなに。

*1:引用:芥見下々『呪術廻戦』集英社「週刊少年ジャンプ」

*2:引用:芥見下々『呪術廻戦』集英社