けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【感想】第157話『部品』|虎杖vs秤決着。熱に生きる男の下した決断【呪術廻戦】

Hatena

 ども、けろです。

 皆さんは新型コロナウイルスのワクチン接種は済みましたか。自治体によって接種のペースが異なっているのでなかなかスムーズにはいかないというのが実際のところかもしれませんが、少しずつ進んでいるのは良いことですね。

 僕自身先日2回目のワクチン接種を終え、ロキソニンを飲んでも38.6度というバグった発熱の副反応に襲われましたが、もうしばらくすれば抗体ができると思えば安いもんです。

 

 というわけで世間話もそこそこに早速やっていきましょう。

 

 呪術廻戦感想回です。

 

1.秤の"熱さ"の背後にある人間臭さ

 

 今週は秤金次というキャラクターの価値観の一端が垣間見えた1話でしたね。こういう直球なキャラクター、僕はめちゃくちゃ好きです。

 

秤「なんで俺を頼る」

虎杖「先輩達がアンタを強いと言ったからだ」

秤「だと思ったよ」

(中略)

秤「術師が術師にするお願いは"一緒に命を懸けて下さい"が前提だろーが!!テメェは俺に命を懸けさせるだけの"熱"を今!!ここで!!伝えなきゃなんねぇんだよ!!

  それを言うこと欠いて人に言われて来ましただぁ!?」 

 

 秤は一度も「虎杖に協力しない」とも「話を聞かない」とも言ってないんですよ。それは言葉だけの上っ面の姿勢というわけでもなく、彼は綺羅羅ちゃんの「話を聞いてあげて!!」という懇願に対しても「今聞くっつったろ」と返しています。

 つまり秤は、「どんな相手とでも常に対話する意思がある人間」なんですよ。それはいきなり賭け試合の門を叩いてきた初対面の虎杖であっても変わらなくて、虎杖の話を聞くつもりはある、というのが伝わってきます。

 

 その上で彼は「"一緒に命を懸けて下さい"が前提だろーが」と述べています。

 これってすごく人間臭いと思いませんか。だってこれって「相手を自分と対等な人間として見て」いなければ出てこない台詞じゃないですか。

 秤は秤なりの矜持があって生きていて、それは「熱」という一言に還元できる。だから彼が協力するかどうかは全て「熱の大きさ・質」に依拠していて、それをすぐに見抜ける人物なんだなぁと。

 

 同時に僕は、この虎杖と秤のやりとりの中にかつて高専にやってきた当時の虎杖と夜蛾のやりとりを思い出しました。

 

夜蛾「事件・事故・病気、君の知らない人間が日々死んでいくのは当たり前のことだ。それが呪いの被害となると看過できないというわけか?」

虎杖「そういう遺言なんでね。細かいことはどうでもいいっす。俺はとにかく人を助けたい」

夜蛾「遺言…?つまり他人の指図で君は呪いに立ち向かうと?」

 

芥見下々『呪術廻戦』単行本1巻第3話から抜粋

 

 これ、どちらも「虎杖本人の意思」を問うているんですよ。秤は「何故俺を必要とするのか」、夜蛾は「何故呪いを祓うのか」という、人によって千差万別となりうる問いを投げることで「虎杖悠仁という人間の腹の中」を探ろうとしている。もっというならそれを通して「虎杖悠仁という人間の本質」を見極めようとしていると言ってもいいでしょう。

 

 ちなみに夜蛾はこのあとで「気づきを与えるのが教育だ」と述べています。夜蛾が教育者であることを踏まえれば前述の台詞が出てくるのは真っ当ですが、じゃあ秤はどういう立ち位置なんでしょうか。

 「秤金次」という人物像に照らして考えるのであれば、シンプルに「外野の声を除いた剥き出しの姿でぶつかりたい」という粗暴さの中に素直さが混じる理由でしょう。

 

 じゃあこれを「呪術廻戦」という「作品」の、大きな舞台装置の流れの一幕としてメタ的に捉えるなら。

 僕は「これまで不足していた、導き手としての先輩ポジション」なのかなぁと。これまでの物語の中でも「先輩」というのは多く登場していて、東京校の2年ズもそうですし京都校の東堂も含まれるでしょう。

 ただ、彼らは「先輩らしい先輩(=後輩に背を見せ、規範となる存在)」というよりも、「共に学び、鍛え上げていく中で出会った戦友」という側面の方が強い気がします。東堂に関しても、虎杖にとっては「先輩」というよりは「ベストフレンド」という言葉の方が合っている気がしますし、とにかくこれまでの話の中では「先輩らしい先輩キャラ」というのはあまり際立って登場してこなかったな、と。

 

 これめちゃくちゃ大事だと思うんですよね。

 特に渋谷事変後の虎杖って、どこか危ういというか、自分の存在すら大局的な目的達成のための駒として考えているドライな側面が目立ち始めていて、このまま放っておけば自らの命すら投げ出しかねない怖さが見え隠れしているんですよ。

 それを決定づけたのが真人との一戦で、その中で虎杖は「己の存在理由」というのをかなり冷淡に断言してしまっていて、それは今回の「俺は部品だ」という台詞からも滲み出ています。

 

 そんな今の虎杖に"気付き"を与えられるとしたら、それは級友である伏黒達よりも、"先輩"としての秤なんじゃないかなと勝手に空想してしまいました。

 

 なんにせよ、いい意味で"剥き出し"の姿勢でぶつかってきてくれる秤が虎杖という人物をいい方向に変えてくれることを願ってやみません。

 

2.虎杖悠仁の眼差し

 

 「俺は部品だ」と静かに言ってのけた虎杖ですが、じゃあそこに彼の意思がないのかというとそういうわけでもなく、虎杖はそれを「己の役割」と思っているわけです。

 ここに虎杖の"らしさ"が出ているなぁと感じますね。「自分は部品だ」と思いつつ(≒自分に言い聞かせつつ)、そこに「熱」が見え隠れしている。虎杖自身、ただの「部品」に収まるつもりはなさそうというか、少なくとも本心には依然人間臭さが残っていて安心できます。

 

 そんな「熱」の籠った眼差しが秤に届いたのか、彼は「取引きだ」と協力的な姿勢を見せてくれました。良かった〜〜〜〜〜〜〜。

 

 というかここで「熱くなってるんじゃない?」と秤自身が気づいていなかった本音を気づかせてくれた綺羅羅ちゃんまじヒロイン。気づかないうちに虎杖の「熱」にアテられて自分自身も熱くなってたんだね秤。

 

 

 正直、この展開の早さは予測できませんでした。

 個人的にはvs秤にもう少し尺を割いて、彼の術式判明までやると思っていたので、それがお預けになったのはちょっと予想外でしたね。

 まぁ物語の展開的にも、乙骨と秤の術式お披露目は死滅回游編の中で明かされる方が面白い気がするので、全然ありだと思います。

 そう考えると次号では秤との「取引き」が描かれたのちにいよいよ死滅回游に参戦するのでしょうか。やっっっっっとデスゲームが始まりそう。みんな来栖華ちゃんとか覚えてるのかな。ちなみに僕はあの変なもみあげのオールバックキャラの名前は忘れました。

 

 物語の舞台もいよいよ死滅回游のコロニーに移りそうで、ワクワクしてきましたね。

 

 

 それでは今回はこの辺で。

 

 

 よしなに。