ども、けろです。
徐々に更新頻度を上げていきたいBLEACH考察記事、前回はややニッチな「地下監獄」でしたので、今回はメジャーな題材をトピックにしようと思います。
作中で最強キャラの一角である十一番隊隊長・更木剣八。その力の正体は未だ明かされておらず、謎に包まれています。
特に彼が副官として連れていた草鹿やちるとの関係性は完全には開示されておらず、読者の解釈に委ねられています。
そこで今回はそんな更木剣八と草鹿やちるの関係性についての考察記事です。
それではやっていきましょう。
- 0.仮説の提示
- 1.更木の始解と同時に消えたやちる
- 2.更木とやちる、及び斬魄刀との関係性
- 3.十刃最強・スタークとリリネットとの対比
- 4.やちるは「具象化」ではなく、「力の核そのもの」である
- 5.更木は何故やちるを生み出したのか
0.仮説の提示
まずいつも通り、本項の前提となる仮説を提示し、本考察を始めていこうと思います。作品を読めばある程度分かることもありますが、それらをまとめた上で僕なりの視点も追加していきます。
仮説:草鹿やちるは、更木剣八が力の核を斬魄刀ではなく人の形に封じた存在である。
1.更木の始解と同時に消えたやちる
前提:やちるは更木が「野晒」を解放した直後姿を消し、その後姿を見せていない。
本考察のとっかかりとして、やちるがどのタイミングで消滅したのかを考えていきます。
やちるの消滅は単行本第64巻、更木と滅却師最強の男・グレミィとの一戦で更木が初めて斬魄刀を解放し、「野晒」を発現させた直後でした。
その際更木は「いいから捜せ!!」と珍しく焦った様子で隊士たちにやちるを捜索させますが、その後やちるは本編に一切登場していません。
より正確には、霊王宮に乗り込んだ際に更木の精神世界で更木に語りかけてきましたが、"現実世界"には一切出てきていないという意味です。
これを僕は、「更木が斬魄刀を解放し、己の力と向き合うことができた今、やちるは実体として存在する必要がなくなった」のだと解釈しています。
2.更木とやちる、及び斬魄刀との関係性
次に、更木とやちるがどのような関係性であったのか、そしてそこに更木が手にした「斬魄刀」がどのように関わっていたのかについて触れていきます。
2-1.自らの出生を更木に暗示していたやちる
次に更木と主人公・黒崎一護との戦闘後の更木の回想シーンです。
更木剣八が生まれたのは北流魂街80地区"更木"であり、やちるの出身は北流魂街79地区"草鹿"。流魂街の番地は基本的に番号が大きくなるほど治安が悪くなり、79地区と80地区はその中でも最下層です。
その中でまだ赤子であったやちると出会った更木は訊ねます。
「……どっから来た、ガキ」
それに対するやちるからの返答はありませんでしたが、やちるはただ黙って更木の持つ斬魄刀に触れました。
これは、「自身が更木の斬魄刀から生まれた」ということを暗示しているのではないか、考えます。
2-2.更木からの問いかけに応えなかった斬魄刀
次に、更木とその斬魄刀の関係性についてです。
更木は一護との戦いに敗れた直後、やちるによって運ばれた建物の屋上で、自身の弱さを嘆き、斬魄刀を天に掲げて次のように願います。
「随分長いこと…待たせちまったな…
なあ…お前は何を今更と思うかも知れねえが…
今からでも俺に、教えちゃくれねえか…
お前のーーーー名を」
この更木の心からの願いに対し、手にした斬魄刀は一切応えず、更木は「…ちっ。やっぱりダメか…」と残念がります。
僕は当初、このシーンを「斬魄刀側が今まで自身を蔑ろにしてきた更木を無視した」のだとばかり思っていました。
が、仮に更木の力の核、つまり自らの魂の本質が斬魄刀ではなく「やちるという人物」に宿っていたのだとすると、このシーンの意味するところが変わってきます。つまり「斬魄刀が応えなかった」のではなく、「訊ねるべき相手が斬魄刀ではなかった」ということです。
3.十刃最強・スタークとリリネットとの対比
では次に、更木とやちるの関係性を紐解く上で参考になる作中設定について取り上げます。
作中最長のストーリーとなる破面篇、その中で登場した敵幹部・十刃。その最強格であり第1十刃(プリメーラ・エスパーダ)の数字を与えられた男、コヨーテ・スタークです。
他の虚が破面化の際に自身の力の核を斬魄刀に封じる(=帰刃時は斬魄刀に宿る力を解放する)のに対し、スタークは破面化の際に自身の力を二つの体に分けました。
その結果生まれたのが彼の従属官、リリネット・ジンジャーバックです。
故に彼が帰刃する際はリリネットの姿が消え、一つの姿に還ります。
破面最強のスタークが「孤独から逃れるために(力の核を別の肉体に分けて)リリネットを生み出した」のであれば、死神最強の更木が「孤独から逃れるために(力の核を別の肉体に分けて)やちるを生み出した」のは特段驚くことではないと考えます。
というのもBLEACHは作中に対比関係となるキャラクターが登場しているからです。死神側のマユリと破面側のザエルアポロ、現世組の一護と死神側の恋次等です。
この対比関係を当てはめて考えると、スタークとリリネットの存在そのものが、更木とやちるの関係を読み解く伏線だったことになります。
4.やちるは「具象化」ではなく、「力の核そのもの」である
次に、「やちるは斬魄刀の具象化ではないか」という説について、個人的に批判的な考察を投げようと思います。
まず「斬魄刀の具象化」とは、「卍解の修得過程の一つであり、斬魄刀が現実世界に実体化すること」を指します。これは斬魄刀所有者の意思によって可能なようで、卍解習得にはこれが必須となります。具象化した斬魄刀を「屈服」させることで卍解を習得することができます。
よくこの考察の際に言われるのが、「やちるは更木の斬魄刀が具象化した姿では?」というものです。
個人的にはこれは違うのではと考えています。
4-1.やちる自身が斬魄刀を持っていた
やちる本人は斬魄刀を所有しています。斬魄刀の名は「三歩剣獣」。
やちるを斬魄刀の具象化だとすると、その本質はあくまでも更木の力の延長であり、彼の力の支配下ということになります。そのやちるが自ら斬魄刀を持ち、あまつさえ解放を可能にしているというのは、少し引っかかります。
これを、「やちるの正体が更木の力の核(=魂の一部)を切り取ったもの」であるとすると説明がつきます。
スタークの従属官・リリネットが自らの意思を持っていたように、やちる自身も意思を持っています。加えて彼女が「自立した魂として駆動している」と考えれば、彼女が斬魄刀を持っていたことの説明もつきそうです(更木が魂を二つに分かち、それをやちるが更に細分化した、という解釈です)。
4-2.具象化にしては期間が長すぎる
具象化は通常、卍解習得の修練時にのみ行われるものです。
それ以外に斬魄刀が保有者の前に姿を現した例外は、現時点では総隊長・京楽春水のみです。滅却師との戦いで瀕死の重傷を負った際に目の前に現れた時ですね。
これを「具象化は斬魄刀所有者の霊力を消費して行われる」と考えると説明がつきます。
更木は確かに底が知れないほどの霊力を持っています。技術開発局の人間にわざわざ霊力を制御する眼帯を造らせ、それを装着しても余りある霊力を誇っており、その強さは作中屈指です。
ですが、やちるが生まれてからずっと具象化の霊力を消費し続けているというのは、少し無理があるのではないでしょうか。
生まれる時点で「別の肉体として切り離した」とすれば、この霊力消費に関してすんなり解釈できそうです。あくまで一つの解釈として、ですが。
5.更木は何故やちるを生み出したのか
最後に、上記の仮説が正しいと仮定した上で、そもそも何故更木は己の力をわざわざ二つの肉体に分けたのか考えていきます。
5-1.孤独を埋めるため
スターク同様、これがシンプルかつ分かりやすいです。
彼は物心ついた時から最強であり、当時最強と謳われていた初代剣八・卯ノ花八千流ですら彼と対等に斬り合うことはできませんでした。
つまり彼は「強すぎるが故の孤独」をずっと味わっていたわけで、それを埋めるため(=側にいてくれる存在を欲して)やちるを生み出したのではないか、という可能性です。
やちるの姿が少女なのも、近くにいても気に留めない(=交戦対象として認識しない)存在として彼が無意識に作り上げたと考えると納得できます。
5-2.大きすぎる力を無意識で制御するため
更木の力は、卍解として完全解放すると彼の肉体が耐えられないほど大きなものです。そのまま放っておけば大きすぎる力が彼本人を殺してしまう。
そもそも更木は八千流との一戦後に無意識に制御しており、彼が自身の力をセーブすることに関しては前例があります。
仮に更木が自分の力を「斬魄刀」の形状で封印していたとすると、彼はその力を自分の意思で自在に引き出せることになります。それはつまり、彼自身の死に直結する。
それを無意識で分かっていたからこそ、彼は自身の力の核をやちるという別の肉体に切り分けたのではないでしょうか。意思を持った別の肉体であれば、力の貸与や斬魄刀の解放を拒むことができます。
さて、更木剣八と草鹿やちるに関する考察は以上となります。
既に巷でよく見かける説ですが、後半に関しては僕自身が作品を読んでいて特に疑問に思った点をまとめているので、それなりにオリジナリティがあるのではと勝手に思っています。
BLEACHは名作ですが、その設定には謎も多く、考察の余地が多くあります。
個人的には設定が全て明かされる作品と同じくらい、読者が自由に考察できる作品も好きなので、自分の一番好きな作品がそういう作品であったこと、僕は本当に嬉しく思います。
BLEACHの考察記事は今後も続けていきますので、どうぞかわいがってあげてください。
それではまた。
よしなに。
*1:引用:久保帯人『BLEACH』第73巻、集英社、p.100-101