けろの漫画雑談所

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【解説】今更聞けない、"縛り"ってなんだ?【呪術廻戦】

Hatena

 ども、けろです。

 呪術廻戦といえば作中で難しい設定がいくつか出てきますが、その中でも"縛り"というものがあります。皆さんはこれを説明できるでしょうか?

 というわけで今回は、作中でもややこしい"縛り"について解説していきます!

 

 

1."縛り"の基本概念〜「代償」と「リターン」〜

 

 まず"縛り"に関して以前乙骨は味方なんじゃないかに関して取り上げた記事で軽く触れましたが、"縛り"はその種類がどのようなものであっても基本的に共通している概念があります。

 

 前提:"縛り"は支払った「代償」に対して「リターン」が与えられるものである。

 

 これが"縛り"に関する基本事項となりますので、よく覚えておいてください。というよりこれさえ頭に入れてくれれば正直十分なところはあります。

 

 どういうことか非常に簡潔に説明すると、物事・事象というのを(外的な力が介在しない)自然状態で「ゼロ」とすると、"縛り"は「足し・引き」という手順を経てから「ゼロ」にしようとすることを指します。よくわからないですね。

 要は「代償(リスクと言い換えてもいいです)」を支払った場合、「ゼロ」から「引き算」が発生して「マイナス」になりますが、それと同等の「リターン」、つまり「足し算」が発生して「プラスマイナスゼロ」になるということです。

 

 次で詳しく見ていきましょう。

 

2.自身で完結する"縛り"〜術式情報の開示等〜

 

 まず"縛り"の中で最も分かりやすく、かつ頻出する"縛り"である、自身で完結する"縛り"について説明します。

 これは作中の戦闘シーン等でよく見られるのですが、術師や呪霊は時折自分の術式のタネを相手に明かしてしまいます。七海や花御、壊相らがこれを行っていましたね。

 

 この「手の内を晒す」という行為、メタ的に見れば少年漫画あるあるなのですが、作品の世界視点で見るとデメリットしかありません。術式というのは戦術の肝ですから、それを明かしてしまえば相手に看破される可能性もありますし、情報が流出すれば対策を講じられる可能性もあります。

 

 つまり「手の内を晒す」というのは、"縛り"において非常に大きな「代償」を支払っていることになります。

 

 では彼らはデメリットだけを一方的に負っているかといえばそうではありません。

 前述しましたが"縛り"は基本的に「足し引きゼロ」を前提にしていますから、「代償」に見合った「リターン」が発生します。

 それが「術式効果の底上げ」です。七海であれば術式の威力が向上したり、花御であれば呪いの種子の成長が早まったり、壊相であれば分解の時間が短縮できたり等です。

 

 ここで重要になるのが、「代償」と「リターン」は必ず同程度になる、ということです。代償が小さければリターンも小さいですし、逆もまた然りです。

 

 例えば京都姉妹校交流会編、渋谷事変編で登場した"五条悟を通さない帳"も、これを応用したものになります。帳は基本的に「一般人から呪いを隠す」結界術ですが、これに少し手を加えて「他のあらゆる術師の侵入を許す」代わりに「五条悟のみを通さない」という「足し引き」を成立させています(五条悟どんだけだよというツッコミはなしでお願いします)。

 

 他には宿儺の領域展開・伏魔御厨子が該当します。通常の領域が結界で外界と分断するのに対し、宿儺の領域は空間を分断しません。それにより敵は「領域外へ走って逃げる」ことが可能になり、これは宿儺にとって大きな「代償」となります。

 その代わりに宿儺は「広大な領域範囲」を「リターン」として獲得しているわけです。

 

 自分の中で完結する"縛り"は、基本的に上記のような考えに則っています。

 

3.他者間での"縛り"〜守らねばならぬ約束事〜

 

 では次に、他者との間で交わされる"縛り"に関してです。

 これも前述と同様、「代償」と「リターン」の概念は変わりません。

 

 ただここで重要なのは、自分に対する"縛り"と異なり、他者との"縛り"には明確な「相手」が存在するという点です。つまり一方にとっての「代償」が他方にとっての「リターン」であるのと同時に、一方にとっての「リターン」が他方にとっての「代償」になるという、相互補完の関係がここで成立します。

 

 言ってしまえば「約束事」になるわけですが、子供がするゆびきりげんまんとはわけが違います。

 これが"縛り"として成立した場合、それが履行されるまでの間、両者はそれを破ることができません。正確には破ることはできますが、それに対して不確定なペナルティが発生します。

 

 メカ丸こと与幸吉から高専側の情報を受け取っていた真人たちが、彼を即座に殺せなかった理由がこれにあたります。

 彼らの間で交わされた"縛り"というのは、メカ丸が「高専側の情報を流す」のに対して真人が「無為転変でメカ丸の体を治す」というものになります。

 

 「高専側の情報を流す」というのは、メカ丸にとっては「代償」であり、真人らにとっては「リターン」になります。

 反対に「メカ丸の体を治す」というのは、メカ丸にとっては「リターン」であり、真人らにとっては「代償」となるわけです。

 

 これが前述の「相互補完」の意味になります。

 他者間での"縛り"は双方に対して強制されるものですので、これをどちらかが破棄、つまり破った場合それに応じた「ペナルティ」が発生します。

 これに関しては作中でどのようなペナルティが発生するのかは明言されていませんでしたが、偽夏油が「"縛り"は基本的に自己と結ぶものだよ」と避けたい口ぶりだったことから、このペナルティの大きさは相当に大きいのだと推察できます。

 

4.生まれ持った"縛り"〜天与呪縛〜

 

 上記の2つの"縛り"は、いずれも人為的に結ばれるもの、つまり後天的に人が自らの手で結ぶものでした。

 それ以外にももう一つ大きな"縛り"が存在します。

 それが作中で何度も登場している「天与呪縛」になります。

 

 これは自己、他者間のどちらとも違い、「生まれた時点で肉体に刻まれている"縛り"」になります。故に「天(が)与(えた)呪縛」なんですね。

 

 天与呪縛における「代償」は、基本的にですが当人の身体機能を制限するものが多いです。

 禪院真希・伏黒甚爾であれば「与えられるはずだった術式」が「代償」として肉体から引き算されていますし、メカ丸であれば「肉体の一部・感覚・強度」が「代償」としてその体に作用しています。

 そしてその「代償」に見合うだけの「リターン」が先天的に肉体に刻まれている。

 

 禪院真希・伏黒甚爾なら「頑強な肉体」が、メカ丸なら「広大な術式範囲と呪力出力」がそれぞれ「リターン」になります。

 

 天与呪縛において重要なのは、「本来であればそういう形で生まれてくるわけではなかった」という点です。前者二人であれば本来術式を継いで生まれてくるはずでしたし、メカ丸も本来だったら五体満足で生まれてくるはずでした。

 

 真希・甚爾は「呪力による強さ」の代わりに「膂力による強さ」が刻まれ、メカ丸は「自由に動ける肉体」の代わりに「日本中をカバーできる呪骸操作」が与えられたわけですね。当人たちが望んでいないというのがまたグッときます……

 

5."縛り"の大前提に関する考察

 

 さて、既に以前の記事でも取り上げているのですが、ここで"縛り"に関する仮説を提示して記事を終えたいと思います。

 

 仮説:"縛り"の条件は「真」でなければならない

 

 この「真」というのは、客観的視点(≒神の視座)から見て嘘偽りのない情報、ということです。

  理由としてはメカ丸が真人たちに「高専側の本当の情報」を流していたことに由来します。彼は確かに"縛り"を結んでいましたが、五条に助けを求めたり、真人たちにバレないように嘘の情報を渡したりすることはできたはずです。

 

 それをしなかったのは、単に真人たちにバレた時のリスクを考慮したというよりも、むしろ客観的に正しくない前提条件は"縛り"の要件に使うことができない、と考える方がいいかもしれません。

 

 これに関しては情報が少ないので仮説の域を出ませんが、こういう形で考えていくのは楽しいですね。

 

 

 今回は以上になります。

 

 少しでも皆さんの役に立っていれば幸いです。

 

 それではまた。

 

 よしなに。