けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【感想】作中ジェンダー観から見る、真希が当主になることの困難さ【呪術廻戦】

Hatena

 ども、けろです。

 2月ももうすぐ終わりという中、いよいよ考察ネタが尽きてきました(ぶっちゃけ)。

 まぁ元々考察メインというより、漫画に関して広く浅く取り扱うはずだったので、ちゃんと漫画の紹介やら解説をしろよという話ではありますね。

 

 というわけで考察記事ではありませんが、呪術廻戦本誌を読んでいて感じたことに関して感想を交えつつ、ダラダラと雑記を話していこうと思います。

 

 それでは以下目次です。

 

0.はじめに

 

  先週のジャンプ本誌第138話にて登場した禪院直哉くん。読者人気・ヘイトの両方が既に天井破りの勢いで高まっている凄まじい新キャラですが、彼の登場によって個人的に思ったことがあります。

 それが「真希の目標である禪院家当主って、読者が思っている以上の困難が付き纏うのでは」というものです。

 京都姉妹校交流会編で真希の過去回想が挟まり、術式を持っていないという術師として最大のハンデを抱えながらも当主を目指すという真希のかっこよさに震えましたが、先週号によってそれが一気に増しました。多分真希が歩む道は荊道どころの騒ぎじゃないからです。真依もその片鱗を見せていましたし、もちろん西宮の野薔薇への台詞から御三家の実情というのは垣間見えていたわけですが。

 

1.禪院家を取り巻く旧来的なジェンダー

 

 まず御三家、特に禪院家の内側が描かれた先週の第138話ですが、主に直哉の台詞からその黒々しさが見えてきましたね。

 

べっぴんさんやけど真希ちゃんはアカン。アレは男を立てられへん。三歩後ろを歩かれへん女は背中刺されて死んだらええ。

その点真依ちゃんは立派やね。真希ちゃんと同じ顔、同じ乳、強がっとるけど自分が女やと心底理解しとる。

 

 作中時間は2018年ですが、まさか2018年にこんなコテコテのミソジニールッキズムの抱き合わせを見ることになるとは。清々しすぎて逆に笑えました。

 しかもこのセリフに対して、直哉の後ろを歩いていた女中は特に何かを言うわけでもなく、沈黙を貫いていました。「……」という吹き出しが当てられていたので、何も感じていないわけではないようですが、それでも直哉の前で口にしなかった辺り、「口にした結果自分がどういう扱いを受けるのかわかっている」「口にするだけ直哉には無駄」と感じているのかなと思います。

 禪院家次期当主候補がこうした傲岸不遜・自己中心的かつ差別的な発言をしてもお咎めなしなのは、これが御三家の中での中心的な価値観なのでしょう。術式を持たざる者は落伍者であり(例:禪院甚爾)、女であれば尚更である、と。

 元々西宮の姉妹校交流会での発言にもあったように、女性術師は相伝の術式を持っていることは当たり前で、その上容姿端麗でなければいけない』という二重のハンデを背負わされていることになります。要はそのどちらが欠けてもダメ、ということですね。(客観的に見てもお世辞にも容姿が良いとは言えない)甚壱が当主候補として挙げられていることからも、この「血統×男尊女卑」の二重構造が深く根付いているのがわかります。

  

2.真希の思い

 

 ただ、そんな中でも真希は毅然と「私が禪院家当主になる」と言い張って実家を出ています。カッケェ。

 以前下の記事でも書きましたが、当時の禪院家当主であった直毘人はそれを否定せず、「ならば相応の試練を与えよう」と返していました。つまり女性が当主になるというのは制度上不可能ではない、ということです。あるいは前例があるのかもしれません。

 

kero-entame-channel.hatenablog.com

 

 制度上不可能ではないこと、可能性ですが前例があったこと等が真希を後押ししたのでしょうか。あとはシンプルに旧態依然とした空気感に嫌気がさした、というのもありそうですね。

 

 この真希の決意というのは、実はパパ黒こと禪院甚爾が五条悟との戦いの最中に感じていたものと同質だったのではないかと思っています。

 甚爾は覚醒した五条相手に退くことを選ばず、「捩じ伏せてみたくなった。俺を否定した禪院家・呪術界、その頂点を」と独白して五条に立ち向かい、死にました。彼は術式も呪力も持たないフィジカルギフテッドの天与呪縛として生を受け(作中で描写はありませんが)相当抑圧されて育ったのでしょう。その彼が、ハンデを背負った立場のまま呪術界の頂点である御三家を否定しようと奮起するその姿が、術式を持たずに生まれた天与呪縛の真希が御三家のトップである当主になろうとする姿勢に重なって見えました。

 

 そのままの流れでいくと真希も道半ばで死んでしまうことになるんですが、そうならないことを祈っています。切に。

 

3.当主就任にあたって必要な要素

 

 では次に、真希が当主になる上で通らなければいけない荊の道の険しさを少し分析してみようと思います。

 
3-1.術師としての大成

 

 大きな弊害は恐らくこれでしょう。彼女は2級相当の呪霊ならなんなく祓えるほど近接戦闘に秀で、呪具の扱いだけで言えば現役の高専生の中でトップクラスの戦闘力を誇ります。にも関わらず彼女の等級は4級。

 これには禪院家が昇級に対して圧力をかけていることが野薔薇から明かされており、だからこそ術師としての知名度を大きく広げることに繋がる姉妹校交流会は絶対に勝つ必要があると述べられていました。

 そもそも肉弾戦主体の術師である真希がそれ一本でどれだけ戦えるようになるのか、直毘人や直哉のように特別1級術師になれるのかは分かりません。甚爾ほどの膂力や頑強さがあればあるいは可能かもしれませんが、彼女の現時点での実力は特級呪霊の陀艮に圧倒されていたので準1級程度が妥当なのかもしれませんね。

 

 術師として大成すること、それ自体が彼女が当主になるための条件の一つといえます。当たり前ですが。

 
3-2.コネの確保

 

 ただ、術師として大成したからといって彼女が当主になれるかというとそれもまた違ってくると思います。

 というのも直毘人が遺言で恵を次期当主に指名していたように、当主就任には制度面における継承順位とは別に現当主からの指名による世襲制があるようです。この後者の直接指名が前者の血統順による継承順位を上回っていることからも、まず現当主に認められることが必要になってくるのでしょう。

 加えて、仮に現当主が認めたとしても、周囲がそれに反対しては元も子もありません。当主には相応の権限が与えられますが、それに同調しない者が多ければ意味がありませんし、何より家系として空中分解します。

 

 もちろん、それをねじ伏せるだけの実力があれば別かもしれませんが、フィジカル最強の甚爾ですら冷遇されていたお家柄で、真希は加えて女性です。実力だけでどうこうなるとは個人的には考えにくい。

 

 となるとやはり、地固めとしてのコネ作りは必要になってくるんだなぁと。要は根回しですね。外堀からきちんと埋めていき、最後に当主に首を縦に振らせる。

 

 

 まとめると真希が当主になるためには、まず術師として1級、あるいは特別1級等に昇級し、その後当主周囲の人間関係を良好に保ちながら籠絡し、次期当主就任に寛容な空気を醸成するといった手順を踏む必要があります。

 あまりにも長い道のり……

 

 

 伏黒が次期当主になってくれるようなので、「じゃあ次期当主は真希さんで」の鶴の一声をかけてくれないかなぁと妄想しています。

 

 

 呪術廻戦におけるジェンダー描写に関しては他にも気になった点があるので、機会を見つけて書こうとおもいます。

 

 

 それでは。

 

 よしなに。