けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【感想】読切_生きる理由ってなんだ?【ゼリーフィッシュ・シンドローム】

Hatena

 ども、けろです。

 本ブログは主に週刊少年ジャンプの作品を取り上げているのですが(といっても今のところ呪術、ヒロアカ、BTWしかありませんが……)、浅く広く色んな作品を読むのが好きなのでアプリ版のジャンプ+も読んでいます。

 流石に連載作品数が多くて全部には目を通しきれていませんが……

 最近だと『怪獣8号』『傷だらけのピアノソナタ』『左ききのエレン』あたりが好きですね。以前連載されていた作品群だと『ムーンランド』『彼方のアストラ』『終極エンゲージ』『鉄腕アダム』『ファイアパンチ』あたりがめちゃくちゃ好きでした。これ無料で読んでいいの?って毎週思ってましたし、とんでもない層の厚さだなぁと。

 

 というわけで不定期ですが、ジャンプ+の作品の感想とかもちょいちょい記事にしていこうかなと思います。

 

 以下目次です。ちなみにネタバレ含むので気をつけてください。

 

 

0.はじめに

 

 このジャンプ+、読切作品もかなり充実してるんですよ。というかめちゃくちゃアツい。

 読切は1話完結形式なので話の起承転結がしっかりコンパクトに収まっているし、ジャンプ+というウェブ媒体だからこそできる多様なストーリーがとてもとても良いです。

 その中でも昨日2月15日に公開された読切、『ゼリーフィッシュ・シンドローム』が本当に本当にめちゃくちゃやばくて、「これ新人?!まじ?!」ってびっくりして変な声出るくらいにはすごかったです。

 月曜の連載陣を抑えて1位を獲得し、PV数も30万超え、いいねは43万を超えていました。

 下記のリンクから無料で読めるので是非是非読んでください。もう今回のブログはこれで読むの終わって構いません。

 

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shonenjumpplus.com

 

1.水母病というセンス

 

 本作品は主人公湊の幼少期、母親の死期を知らされ、その最期に直面するシーンから。

 ここで明かされた、作中オリジナルの奇病「水母病」、それはクラゲの形状をした模様が全身に広がり、最期には身体も骨も、あらゆる体組織が融解して消えてしまうという病

 本人が強く強く「消えたい」と思った際に発病する精神疾患の一種で、言わば致死性の精神病というものになります。

 主人公湊は、母親に何度も「なんで消えたいの」と問います。

 発症する前から泣いていた母に泣いていた理由を尋ねても、母は答えてくれなかったのでしょう。だから「ごめんね、大丈夫だから」と笑って強がってみせ、最期には溶けて消えてしまった。

 

 めちゃくちゃセンスのあるオサレな設定だなぁと思いました。

 水母は体組織の95〜97%が水分で構成されており、有機物の構成比はおよそ1〜2%。要するに「ほぼ水」でできているのが水母であり、それが転じて「いてもいなくても変わらない」という意味があるのでしょう。

 また水母には回遊能力がほとんどありません。基本的に海流に身を委ねて流されるのが基本的な生き方です。それはきっと、この病気に感染した人も同じで、生きる意味がわからない人たち、つまり「己の心身の意味・世界に存在している理由がわからない」ということを指しているのでしょう。

 

 普段水族館等で照明に照らされてゆらゆらと無害そうに泳ぐ水母の姿から、人の心を蝕む死の病を引っ張ってきたのはまじでとんでもなくオサレでした。

 

2.消えたい理由、生きたい理由

 

 何よりこの作品、人間ドラマがすごい。

 湊は海の家でバイトする高校生。ある日海沿いの崖から女性が飛び降りる瞬間に直面し、それを助けたところから物語が動き始めます。

 母親と同じ水母病である彼女、美月は湊がナンパする形で海の家で働くことになるのですが、美月は快活というか、常に笑顔で接客するし湊にも明るく接します。

 だからこそ湊には彼女が消えたいと思う理由がわからなくて尋ねるが、返ってきた彼女の返答は「全部」というものでした。

 ここから差し込まれる回想シーンはなかなかヘビーなのですが、でも「どうしてそうなったのか」という核心に迫る過去は明かされない。彼女は「普通になれない」ことを嘆いて自死を選択するくらいには追い詰められますが、結局「なぜ」という読者と湊の双方が抱く疑問に対する直接的な答えは出てこないんです。

 

 でも、不思議とそれでもやもやしない。

 なんでかなーって思ったら、大体の人間が「消えたい」と思う理由って、いい意味で大仰じゃないからだと思うんですよ。漫画の主人公とかだったら大層な過去というか、確執や因縁、でっかい過去なんかがあったりすると思うんですが、僕らはそうじゃない。ふとしたきっかけで自分が周りと「違う」と思ったり、小さな理由で世界から「消えてしまいたい」と思ったりする。

 そんな等身大さを感じることができました。

 

 個人的に、終盤見開きで湊が美月にいった「俺は生きる理由になれませんか?」は絵柄も相まってめちゃくちゃ刺さりました。

 特に湊は過去に母親を亡くしていて、自分が母親にとっての「生きる理由」足り得なかった。だからこそ今度はと思って美月を救おうと動いて、その末に出てきたこの言葉。「死なないで」「生きててほしい」そういう(良くも悪くも)ありきたりな言葉ではなくて、「自分が相手にとって何かできる人物でありたい、そうであってほしい」という痛切な願いが伝わってきたからめちゃくちゃ良かった。

 

 この手の人間ドラマに弱いんですよ、自分。

 先日読切で公開された『ヒーローコンプレックス』も等身大の人間模様を描いていたし、そういう「日常の只中を生きる人の様々な感情の変化」を感じ取れる作品が本当に好きです。

 

 今回の『ゼリーフィッシュ・シンドローム』、読切としての完成度で言えば死ぬほど高くて最高の読み応えでした。

 

 今後もこういう作品とかがあれば随時取り上げてだらだらと感想を述べたいと思いますので、よかったら覗いていってください。

 

 

 それじゃあまた。

 

 よしなに。