けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【感想】第301話_燈矢闇落ちの真実が重すぎる【僕のヒーローアカデミア】

Hatena

 ども、けろです。

 怒涛の勢いでやっていきましょう、感想回です。

 

 本当は全巻集めているのでヒロアカの考察もやっていきたいのですが、そこまで深く読み込めていなかったりするので、そのうちやれたらな、と思っています。30巻近く出てる漫画をこれから考察していくのはなかなか難しいので。

 

 

1.結婚の真実

 

 正直予想外でしたね。というのも物語冒頭の設定とちょっと矛盾するんじゃ?と思ったからです。

 エンデヴァーというのは自らがオールマイトを超えようと躍起になり、その中で自分には超えられないと悟ったから個性婚をし、氷と炎の二つのハイブリッド個性を使える子供を作ろうとした。その結果生まれたのが焦凍らであって、焦凍はエンデヴァーの英才教育を受けた結果歪んだ成長をしてしまった、というのが物語序盤、体育祭編で明らかになっていた轟家の設定でした。

 それがここにきて、「オールマイトを超える子を作る」という目的は確かに存在しているけれど、どちらかというと「燈矢がヒーローを諦められるように」という理由があったと明らかになった。まぁこれはどう取り繕っても「優しさ」や「思いやり」の類ではないです。冷自身も「あの子を見なかったのはあなただけじゃない」と己の罪を認めています。

 ただ、やっぱりエンデヴァーが言った「いずれ貴様をも超えるヒーローにする、そうするべく……つくった仔だ(単行本4巻第31話)」「燈矢は惜しかった(中略)おまえだ焦凍。ようやくおまえが」という冷酷な台詞からは少しブレるように見えました。冬美や夏雄に対して「アレ」なんて言い方もしないはずです。加えて母親冷の「子どもたちがどんどんあの人に似てくる。焦凍の左側が時折醜く見える」という過去シーンは、今回で明らかになった比較的平穏なお見合いシーンから想像ができません。

 整合性があるように解釈をするなら、燈矢に対する歪んだ想いと、それを焦凍にぶつけたエンデヴァーの姿を見て冷も少しずつおかしくなっていった、とかでしょうか。

 ただなんにせよ、焦凍が生まれ、両親双方の個性を宿していることが分かった瞬間のエンデヴァーの「歓喜」冷の「安堵」燈矢の「絶望」の表情は、対比としてものすごく重かった…。

 

2.「俺のこと見てよ」の悲痛さ

 

 結局のところ、誰も「燈矢本人」のことを見ていなかった。エンデヴァーは「自分の子」である以前に「オールマイトを超える、ヒーローエンデヴァーの後継ぎ」として期待していたからこそ、燈矢に「超えたい」と思わせてしまった。エンデヴァーが歪んだ期待を向けなければ、燈矢は夏雄や冬美と同じように育っていたのかもしれません。夏雄が普通に大学に通っていたように、燈矢も歪むことなく成長し、「個性」を特別視することもなかったんじゃないか、と。

 エンデヴァーも冷も、確かに燈矢のことを思って行動し、夏雄や焦凍が産まれた。でもそれは燈矢を「折る」ための行動で、それは親のエゴ。スーツを着たエンデヴァーが困惑しながら言い放った「おまえの為なんだ」は、「俺はもう「超えたい」って思ってるんだ!」と心に決めた燈矢には刺さらないどころか逆効果だった。

 子育てに正解はないから、こんなのは言ってしまえばただの結果論ですし、燈矢が荼毘になることを選択した理由として正当化は全くできません。悪は悪であり、そう「選択」したのは燈矢本人なので。

 

 ただそれでも、インターン編の時に夏雄が言った「俺はずっと燈矢兄から聞かされてきた」は、「父さんが俺のことを見てくれない」ということだし、荼毘が踊りながら口にした「毎日夏くんに泣いて縋った事」というのは「自分が産まれてきた理由を、産んだ張本人たちが否定する」ことだった。

 エンデヴァーはビルボードチャートの舞台で大衆に「俺を見ていてくれ」と言ったけれど、当の本人であるエンデヴァーは「一番見なければいけない存在」を見てこなかった。より正確には、「見ているようでその最も濃い歪みからは目を逸らしていた」のでしょう。

 

 今回、燈矢が泣きながら言った「俺はお父さんの子どもなんだから」「お父さんが火をつけたんだ」「俺を見ろよ…!!エンデヴァー」を踏まえてから大戦で荼毘が言った「言われなくてもずうっとおまえを見ていた」「ザ!!自業自得だぜ。さァ一緒に堕ちよう轟炎司!!地獄で息子と踊ろうぜ!!!」を読み返すと、その重さが一段と増しますね。

 一方通行で、届くことのない父/エンデヴァーへの想いが年月をかけて歪み、今こうしてエンデヴァーに牙を剥いた。

 

 

 この傷と轟家はどう向き合うのか。

 来週が楽しみですね。

 

 

 それでは。

 

 よしなに。