けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【考察】サブタイトルの意味_1巻編【呪術廻戦】

Hatena

 ども、けろです。

 基本的に毎日昼頃アップされる記事に関しては予約投稿で1日〜数日前に公開設定されているので、この記事が投稿される今日発売のジャンプ最新号に関する感想やら考察に関しては別記事で取り上げます。きっと地獄だと思います(地獄の予想)。

 

 というわけでやっていきましょう。

 今回から不定期で(自分がきちんと考察できてからという意)このシリーズやっていきたいです。題して「サブタイトル考察」です。そのまんまですね。

 というのも呪術廻戦のサブタイトルというのは割と一貫していて、サブタイトル+数字でそのままそれが○○編として続いたりもするので、そこに込められた意味を紐解いていくと読み返すときにきっと違った読み味になるのかな、と思ったので。

 

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 1巻は割と軽いものが多いですが、解説も交えてやっていきます。

 以下目次です。

 

 

1.第1話『両面宿儺』

 

 これはそのまま、作中に登場する最悪の呪い、両面宿儺です。

 よく勘違いされているのですが、両面宿儺は呪霊ではありません。腕が4本、顔が2つある仮想の鬼神ですが、これはあくまで伝承上のお話であり、本作の場合は千年前に実在した人間に対してつけられた字名です。なので区分としては呪霊というより呪詛師に近いですね。

 第1話、ここから全てが始まったわけですね。呪術界とは無縁だった高校生虎杖が、ひょんなことから両面宿儺の指の一本を食べ、受肉してしまったことがきっかけで呪いを巡る戦いに巻き込まれていく。そんな物語の始まりを象徴するに相応しいサブタイトルだと思います。

 余談ですが、五条からの伝令では「百葉箱の中にしまってある」とされていた両面宿儺の指を、虎杖が「拾った」と述べていたのは、誰かの策謀を感じますね。まぁちっちゃい頃からパチンコの代打ちとかやらされてそうな虎杖くんですから、自分が悪いことしたのをなんとなく知っていて、とぼける意味合いでそう言って誤魔化そうとした可能性もありますが。

 

2.第2話『秘匿死刑』

 

 これもそのままですね。第2話は前話で伏黒が「お前を祓う(ころす)」と宣言したシーンから一転、壁中に呪符が貼られた密室の中で対峙する虎杖と五条のシーンから始まります。

 ここで告げられる「秘匿死刑」。0巻でもあった展開なので読者は流しがちですが、これってよくよく考えるとかなり悍ましいことなんですよね。

 秘匿死刑とはつまり、虎杖悠二という一個人の存在が、周囲が気付かぬ間に社会から抹消されることを指します。これを決定できる高専上層部、恐らく司法に対する政治的権力も相当大きいでしょうから、この世界では本当に呪術界上層部が社会を裏から仕切っていると言っても過言ではないでしょう。

 というわけで、虎杖悠二が戦う理由を見つけ、呪術の世界に一歩踏み出すきっかけとなった秘匿死刑そのものがサブタイトルに付けられているのは、物語の起承転結の「起」を彩るものとしてぴったりです。

 

3.第3話『自分のために』

 

 虎杖悠二が宿儺の指を食う理由は、確かに「呪いは放っておけない」でしたが、高専に来る前の"それ"は、自己を理由の中心に据えたものではなく、"祖父の遺言と自身の適性を鑑みた結果、そうした方がいい"という、どこか他人依存なものだったように思います。「本当、面倒くせえ遺言だよ」という台詞と、脳裏をよぎった祖父の遺言の対比からも、それが伺えます(だからといって虎杖本人が嫌々仕方なく、というわけではないですが)。

 そんな思考の浮つきというか、明確に定まり切っていない"戦う理由"を夜蛾学長に看破され、「自分が呪いに殺された時も、そうやって祖父のせいにするのか」と痛烈な反論を受けたのがこの第3話です。

 そこから虎杖の独白を挟み、「「宿儺を喰う」それは俺にしかできないんだって。(中略)生き様で後悔はしたくない」と決意を新たにする回ですが、短いページ数で虎杖の心の機微というか、自分に対して「何故・誰のために戦うのか」と自問し、それに対する答えを導いています。

 それがタイトルにもある「自分のため」ですね。確かに祖父の遺言だった、でもそれが今は(他の誰でもない)「自分」が戦う理由としてしっかり落とし込まれた。綺麗な着地と綺麗なサブタイトルとの繋がりですね。

 

 余談ですがこの「己のために」というのは、皮肉にも宿儺の生き様にも当てはまります。それが利他的行動なのか利己的行動なのか、という決定的な違いがありますが。

 虎杖は自己犠牲の精神を持ち合わせ、「他人を宿儺の被害から救えるのは自分しかいないから」という利他的な理由で行動します。それに対して宿儺は、「己の快・不快を鑑みて行動するのがベスト」という極めて利己的な理由です。

 一つの肉体に宿る二つの精神が、異なる顔を覗かせるという対比は、サブタイトルの解釈の幅を広げてくれますね。

 

4.第4話『鉄骨娘』

 

 これがちょっと難解な気がしました。単に僕の読解力がないだけですが。

 この「娘」というのは間違いなく釘崎野薔薇のことですが、前半の「鉄骨」は何を指しているのか。釘崎の術式を考えれば鉄骨より鉄釘とかの方が合いそうな気がします。

 本来の「鉄骨」の語義としては「建造物の骨組みにする鉄材」の意味がありますから、こっちから解釈するのがいいかもしれませんね。

 つまり、釘崎という少女そのものが呪術廻戦という物語における「重要な骨組みの一部」である、ということです。単行本7〜8巻の呪胎九相図との戦いで黒閃に覚醒し、虎杖との会話で「人を殺すこと」について論じた彼女は、この物語において欠かすことのできないエッセンスです。

 あるいは、単に「ぶっとくて折れない、鉄骨ように強い女」というめちゃくちゃシンプルな理由かもしれませんね。多分そっちの方が当てはまるでしょう。釘崎は強い(多義)ので。

 

5.第5話『始まり』

 

 無事呪いを祓い、田舎時代を回想して術師として戦う理由を明確にした釘崎。

 一年生3人が揃い、物語のイントロダクションパートが終了したことを告げるこのサブタイトル。

 最終ページ怪しく浮かぶ呪胎と、「内1名死亡」の衝撃。

 「ここから呪術廻戦という物語が幕を開けますよ」と言わんばかりの終わり方は、サブタイトルにも表れていますね。

 

6.第6,7話『呪胎戴天』

 

 実は呪術廻戦の構想時のタイトルがこれだったそうです。

 こんな四字熟語は存在しませんから、前半部分と後半部分に分けて考えましょう。

 まず前半、「呪胎」です。

 これはシンプルに「呪いの胎児」「まだ生まれ落ちていない呪い」を意味します。「胎」には「子が母の体内に宿ること」「母体の中で、子のやどる所。子宮」等の意味があり、これを用いた熟語としては「胎動」「胎児」「堕胎」などがありますね。

 「"呪い"が"世の中に宿る"こと」を指しての「呪胎」ということです。

 人間の場合宿る場所は「母の体内(=子宮)」ですが、呪いには母となるような存在はいません。いるとするなら、呪いを生み出すに至った、人間の負の感情・漏出した呪力です。つまり呪霊・呪いにとっては、「この世」こそが「宿るべき胎内」ということなのでしょうね。

 

 続いて「戴天」です。

 これは実在する熟語で、「天をいただくこと。この世に生きてあること。同じ空の下で生きること」等を指す言葉です。「一緒には生きられない」という意味の「不倶戴天」の四字熟語が有名ですね。

 

 つまり「呪胎戴天」は、「生まれ落ちた呪い」が「天をいただく、空の下生きること」<.span>を指しています。少年院という、負の感情が集積する場で生まれた特級相当の呪霊。産声を上げてすぐに3人の受刑者を惨殺し、まるでそれが楽しいとでも言わんばかりにケラケラと笑っていました。

 生まれ落ちてすぐ、つまり赤ん坊の呪霊に善悪の価値基準はなく、ただただ自分が楽しいから殺す

 

 この「呪胎戴天」に、元の四字熟語である「不倶戴天」もかかっているのだとすれば、それはきっと「人と呪いは一緒には生きられない」ということを案に示しているのかもしれません。

 

 

 1巻はかなりシンプルでしたね。後半が少しややこしかったですが、きっとこれ以降のサブタイトルほどではないでしょう(血反吐)。

 第2巻以降がいつになるかは分かりませんが、気長に待っていただけたらと思います。

 

 

 それでは。

 よしなに。