けろの漫画雑談所

漫画の感想・考察・妄想の集積所です。主にジャンプ作品についてだらだらと語ります。

【考察】乙骨憂太は敵か味方か_前編・味方説【呪術廻戦】

Hatena
 ども、けろです。
 タイトルの通り早速やっていこうと思います。
 
 今週の呪術廻戦第137話でちょっと衝撃的すぎる展開がありました。
 
 乙骨の本編登場、狗巻の片腕欠損、乙骨の虎杖死刑執行人任命
 
 これだけ情報量が無量空処している中で、乙骨の死刑執行人任命に関して、「あれは芝居なのでは」「実は味方ではないか」という、考察半分妄想半分な声を多く見かけました。
 
 というわけでタイトル通り、最新話の乙骨の発言や高専上層部との会話から、乙骨味方説敵説の双方を考察していこうと思います。前編となる今回は、まず乙骨が実は味方、つまり虎杖殺害宣言はブラフであり、虎杖の確保・保護が主目的である「味方説」の検証です。
 

0.最新話おさらい

 

 最新話の軽い復習になりますが、最新137話は
 東京壊滅による政治的空白について様々な視点からの台詞
 ↓
 コンビニでご飯を漁る子供と、それを唆す呪霊の登場
 ↓
 乙骨の登場、呪霊の撃退
 ↓
 高専上層部の部屋(?)にて「虎杖を殺す」発言
 ↓
 夏油、五条、夜蛾学長、虎杖らに対しての罪状認定
 となっていました。詳細は本誌を読んでください。 
 

 1.狗巻の腕を落としたのは高専上層部

 

 根拠:宿儺の術式に巻き込まれたにしては傷の負い方が奇妙
 
 作中で乙骨は「五条先生の教え子とか関係ないですよ。奴は狗巻くんの腕を落とした」と述べています。背景は呪符に包まれた狗巻。
 まず彼の腕が欠損しているのはほぼ確定の情報として、ここで疑問になるのは「彼の腕を落としたのは誰なのか」です。
 ここで狗巻が描かれているコマに注目したいのですが、傷口周辺には細かな傷があります。
 仮に狗巻が宿儺の領域に巻き込まれたとして、彼の領域内にある呪力を帯びたもの・無生物は細切れにされてしまいますから、なぜ被害が腕だけで済んだのでしょう。
 領域ギリギリの地点にいて片腕だけが領域の効果範囲に入っていた、とかならあり得ますが、状況的にかなり怪しいですね。
 
 であるなら、宿儺/虎杖が狗巻を傷つけたというのが作中時間軸の一体いつなのかかなり疑問が残ります。
 これが高専上層部による策謀であるとするなら乙骨味方説もやや腑に落ちます。理由は以下の通り。
 
1-1.狗巻を使って乙骨を焚き付け、親五条派をまとめて排除しようとしている

 

 京都校学長をはじめとする高専上層部保守派は、五条とそれに与する輩を快く思っておらず、それを排除するためなら手段を選んでいません。

   少年院では虎杖らを派遣し、仮に伏黒らが死んでも構わないと思っています。であるなら、狗巻を政治的に利用しようとするのも合点がいきますね。
 
 
1-2.乙骨ほどの術師が、杜撰な策謀に気づかないはずがない。

 

 まがりなりにも乙骨は特級を冠された術師です。加えて、いくら狗巻が語彙を絞っているとはいえ仮に上層部が犯人であればそれを伝える手段はいくらでもあるはずです(狗巻の身が上層部側に拘束されている等であれば別ですが……)
 

2.高専上層部は「縛り」を結べない

 

 根拠①:「縛り」は「代償」と「リターン」が一程度釣り合わなければいけない
 
 高専上層部の元を訪れた乙骨は「これで僕がアナタ達の命令に従うと分かったでしょう」と述べ、それに対し上層部の変な前髪のおっさんは「ヒッヒッ呪霊をいくら殺した所で何の証明にもならんさ」と返しています。
 この会話、おそらくですがその前のやりとりがあった上での延長というか、その続きであることがわかります。
 その前の会話を類推すると、
 
 乙骨「僕が虎杖殺します」
 上層部「いやお前五条の教え子だし同じ教え子の虎杖匿うでしょ」
 乙骨「アナタ達に従いますよ」
 上層部「じゃあ呪霊殺してきてよwまぁやってもあんま変わらんけどなw」
 乙骨「じゃあぶっ殺してくるわ」
 
 みたいなやりとりになるのかなと。少なくとも彼が「命令に従うと分かったでしょう」と顔色を窺う発言をしている以上、彼は上層部の信頼を勝ち取りたかったのだということが分かります
 それを一蹴した上層部に対し、乙骨は再度の提案として「じゃあ縛りでもなんでも結んだらいいでしょう」と返していますが、それに対する上層部の返答は描かれていません。
 これを、「乙骨を信用し縛りを結ばなかった」ではなく条件的に縛りを結べなかった」のだとすると、乙骨味方説が強まります。
 というのも「縛り」というのは基本的に「代償(マイナス)に対応するリターン(プラス)」を齎すもので、それらは足し引きゼロ」になるよう設計されています。失うものが小さければ得られるリターンも小さく、大きければ大きいほど莫大なリターンが返ってくる、ギャンブルと同じですね。逆説的に、「リターン」の設定されていない(=代償だけの)「縛り」というのは成立しない、ということです。
 ここで乙骨が結ぼうとした「縛り」ですが、彼は執拗に虎杖を殺害を引き受けようという素振りが見えますから、「代償」として「虎杖殺害」を条件に「縛り」を結ぼうとしていたようです。
 
 では「リターン」として何が設定されるのか。
 そもそも乙骨ほどの術師が誰かに従わなければいけない状況というくらいですから、これが「狗巻を治す」等の条件だとすると納得がいきます。「狗巻を治す」条件として「虎杖を殺す」という「縛り」ですね。これを乙骨側から要求することで「僕はアナタ達に従いますよ」というアピールをしていたわけですね。条件的にもかなりフェア・対等な縛りに見えますからね。
 
 ですが上層部側は「縛り」を結ばなかった。彼らにとってかなり有利な条件になるはずなのに、です。
 
 根拠②:「縛り」の条件は「真」でなければならない
 
 であるなら、どこかに上層部にとって都合の悪いことがあるはずです。
 これが「「縛り」を結ぶ際の前提条件のどこかが破綻している」するとどうでしょうか。
 「縛り」は、自己、及び他者間で交わす約束事であり、双方が合意した時点で形成されます。
 ここで注意しなければいけないのは、「縛り」を結ぶ際に提示される条件というのは、(現象的・客観的に)「真」でなければならない、という点です。
 
 渋谷事変直前に、高専側の術師メカ丸と呪霊真人の間で交わされた「縛り」を覚えていますでしょうか。
 メカ丸は「代償」として「高専側の情報」を、「リターン」として「肉体の治癒」を設定して「縛り」を結びました。
 
 ここで彼は「肉体の治癒」を主目的としていましたが、果たして高専側の(本当の)情報」を真人たちに与える必要があったのでしょうか。
 確かに真人たちの信頼を得るためにはある程度精度の高い情報を提示したほうがいいのは間違いありませんが、やり方はいくらでもあるはずです(小型の呪骸を作って五条に助けを求めるとか)。
 
 にも関わらず彼が最後まで徹底して真人に与した理由が、「「縛り」を結ぶ際に交わす条件は、「客観的に(=神の視点から見て)真実でなければならない」」だとすると、彼が律儀に高専側の情報を渡していたことに合点がいきます。「偽の情報を渡すこと」そのものが、「縛り」の条件に反するというわけです。
 
 長くなりましたが本稿に戻ります。
 高専側が乙骨と「縛り」を結べなかった理由が設定される条件に真実と異なるものが混ざっている」とするなら、それは「狗巻の負傷そのもの」になるのではないでしょうか。
 例えば「狗巻はそもそも負傷していない(=乙骨は騙されている)」「狗巻を傷つけたのは虎杖ではなく高専上層部」等です。
 乙骨が与えられている情報は「狗巻は虎杖によって腕を欠損させられた」ですが、これが客観的に見て「偽」となる(≒「リターン」として設定される「(虎杖によって負傷した)狗巻を治す」が成立しない)からこそ高専上層部は「縛り」を結べなかったのではないでしょうか。
 そして乙骨はそれを知っていたからこそ、確かめるような言い方をした。
 
「縛りでもなんでも結んだらいいでしょう(結べるもんならな)」と。
 

3.他の術師に対して有利な立場の確保  

 

 もう一点は半ば妄想というか、前述の(a)と(b)が正しいという前提に立ったうえで、何故わざわざ死刑執行人を引き受けたかの推察になりますが、これは「他の術師に対して有利な立場で虎杖と接触するため」だと思われます。
 まぁ指15本を受肉した宿儺と真正面からやり合って勝てる術師がどれくらい残っているのかというそもそも論がありますが……(術師サイドだと九十九、乙骨くらいでしょうか)。
 乙骨が死刑執行人を任命されたということは、彼は優先的に虎杖を殺害する権利を得たことになります。
 
 彼がその任に就いている間は他の術師は手出しできなくなるわけですから、その間に接触して保護する、というのが目的だとするなら納得できます。
 
 
 以上が「乙骨味方説」となる諸要素です。個人的には「縛り」関連の描写は結構疑問が多く残っているので、それがこの説のような形で回収されるのであればかなりすっきりしますね。
 
 
 では次回の「後編・乙骨敵説」でお会いしましょう。
 
 よしなに。